30代転職組・新間草海先生の『叱らないでもいいですか』

We are the 99%。転職を繰り返し、漂流する人生からつかんだ「天職」と「困らない」生き方。
高卒資格のまま愛知の小学校教員になった筆者のスナイパー的学校日記。
『叱らない で、子どもに伝え、通じ合う、子育て』を標榜し、一人の人間として「素(す)」にもどり、素でいられる大人たちと共に、ありのままでいられる子どもたちを育てたいと願っています。
生活の中の、ほんのちょっとした入り口を見つけだし、そして、そこから、決して見失うことのない、本当に願っている社会をつくりだそう、とするものです。
新間草海(あらまそうかい)

SDGs

オリンピック憲章とSDGsの振り返り

五輪の話くらいしないと、給食すら無言で食べ、隣のクラスは学級閉鎖だというのに、学校が明るい雰囲気にならない。

カーリングは子どもたちもニュースを見ていて、

「メダルははじめてだって」
「途中でおやつを食べるんだってね」
「ルールがわからんね」


などといって、ちょっとおもしろがっている。

そこで、『ものごとというのは上流から学んだ方が効率が良い』というハーバード大学の教授の説にしたがって、五輪の発祥と、オリンピック憲章について学ぶことにした。
これまで総合の時間に学んできたSDGsのまとめにもつながると判断したからだ。

さて、オリンピック憲章には、オリンピックの競技大会の定義が明記されている。
Olympic Games
1. The Olympic Games are competitions between athletes in individual or team events and
not between countries. They bring together the athletes selected by their respective
NOCs, whose entries have been accepted by the IOC. They compete under the technical
direction of the IFs concerned.

オリンピック競技大会とは
1. オリンピック競技大会は、 個人種目または団体種目での選手間の競争であり、 国家間の競争ではない。 大会には NOC が選抜し、 IOC から参加登録申請を認められた選手が集う。選手は国際競技連盟 の技術面での指導のもとに競技する。

国家同士の競争ではない、というところがミソだ。

これを読んでから、みんなならどう変えるか、アイデアを出し合った。

「がんばれ、ニッポン」⇒「がんばれ、〇〇〇」

当然のように意見がたくさん出てきたが、
・がんばれ、みんな
・がんばれ、にんげん
・がんばれ、おれたち
・がんばれ、アスリート
・がんばれ、スポーツ


などと意見が出た。

その後、オリンピックの目的を考えた。

当然のように、「勝つため」「勝ってテレビにでること」「メダルをゲットする」などが出る。
これは予測される発言であるが、ここからが小学生があれこれと考える場になる。
そこで、

「勝つためならば何をしても良いか」

と問うと、これはみんな黙ってしまい、その後少しずつ意見が出てくる。

・なにをしてもいいわけではない。
・だからといって薬とかドーピングとかはダメ
・身体をこわしてしまうような練習はやめた方がいいと思う など。


SDGsの学習をすすめるとき、最初は、便利さを追求するのは良いことだ、という意見もあった。
しかし、だからといって、なんでも使い捨てで良いのか、というと、それはいやだ、ということになった。つまり、自分の選んだ手段が、本当に本来の目的にたどりつくものなのか、ということをきちんと考えていくべきだ、というのだ。本末転倒でもよい、という考えでは、実際に人間は大きな損をしてきている。SDGsの学習では「本末転倒はやめよう」ということを学んできた。
小学生がSDGsを学ぶ意味というのは、人間が考える、手段と目的との相互関連を学ぶことが主眼なのだろう、と思う。

オリンピックでも、手段はなにか、本来の目的はなにか、ということから考えていく。

そうすると、「国家のためにドーピングをし、無理やりにでもメダルをとる」というのは、価値があるのかどうか、という議論になってくる。

国によっては、メダルさえとれば生涯にわたって報奨金を受け取ることができるなど、選手の「参加動機」を無理やりにねじまげてしまうほどのシステムも存在する。本来のスポーツの目的ははるかどこかへ消えてしまい、メダルをとるのが「大金をもらう」ことに直結するのだし、それが目的になる。選手間にドーピングが流行するのも、無理もない話で、システムからしてそうなるようになっている。

授業の終わりに、もう一度、オリンピックの目的はなにか、ということを問う。

〇他の国の選手と交流し、おたがいにがんばろうと誓う場
〇他の国の選手と知り合ってどうやったらもっとうまくいくか、情報交換する場


子どもたちは、オリンピックの選手たちも、いつもの学校のように、教室でやっているように、知恵を集めて話し合うといい、と考えている。
カーリングの選手たちが、もぐもぐタイムでエネルギー補給をしながら、後半戦の作戦を立てるために話し合っているシーンが、テレビで何度も放映され、有名になった。子どもたちのイメージは、あれである。教室でも同じだ。親近感がわく。みんなで知恵を出すのが、もっとも幸福に至る近道。

「1位になった国の選手に、どうやったら上手になれるのか、あとで、みんながきいてもいいような時間をつくればいいのに」
「そうそう。すぐ帰っちゃもったいない」

まあ、そんなオリンピックの光景があるとしたら、ほのぼのとして面白いかもね。

sports_curling_woman

【高学年・総合】プラスチックが紙に変わってきている?

スーパーやお店で買っているもの。
以前はプラスチックだったのに、紙に変わってきているものがある。
なにかひとつ、見つけて報告しよう。

こういう学習をしたところ、子どもたちは写真をとってきて見せてくれたり、ノートにイラストをかいて説明してくれたりと、なかなか面白く活動ができた。

写真を撮るのは、とてもいい活動になる。
それを見せながら、説明する、ということが癖になっていると、物おじせずに発表できる子に育っていく気がするよ。
これは欧米ではShow and Tell と言われているらしい?
子どもに限らず、情報を共有する際の当たり前の行動。大人でもそう。

さて、どんなものが発表されたか。

まずは、キットカット。
チョコレートです。みなさんおなじみ。
しばらく前から、袋がプラスチックではなく、紙製になっている。

つぎは、コンビニのお弁当。
ふた以外が、紙製になったものが売られている。
紙だけど、水分にも負けないコーティングがしてあるらしい。

さらに、中身の見える紙製のクリアファイルも世に出ているらしい。
これなど、紙なのに中身が透けて見える、というのが驚きだ。
紙を半透明にするなどという、ちょっと以前なら考えられない技術も、どうやら実現しているらしい。

あとは、惣菜の容器、飲料のふたが、プラスチックの量が少ないフィルム状になってきているものもある。

東京ではスーパーのイオンが繰り返し使える容器でシャンプーや消臭剤、ガムなどを販売する「LOOP」というシステムを始めた。詰め替えられる商品がまだ限定的ではあるが、こうした動きはどんどんと加速していくにちがいない。

こうした動きは消費者の声が生きている。
つまり、「こんなことができたらいいのでは」という声をあげた、貴重な消費者の人がいる、ということだ。
そこには、「どうせそんなのしないよ、企業は金儲け主義だから」という冷めた感じがない。
きっと、企業だって過剰なエネルギーを削減しようとしている。消費者の本音をぶつければ、企業だって動く気持ちはもっている。そう信じた少数の消費者が、自分たちの意見を会社に進言した。

イオンは立派だ。
その声を、きちんと聴いた。
「消費者はうるさいもの、やっかいなもの」という認識ではなく、きちんと仲間として信頼しているところが立派だ。

そういえば、いつの間にか、ロールパンの包装の仕方が変わっている。
以前は、クロージャーという、きんちゃくのように袋の上部を留める道具がついていた。クロージャー

あれはまあちょっとだけ便利といえば便利だった。なぜなら、口を閉じて留めることができるから、なんとなく保存するのがやりやすかったからだ。
しかし、まあ、クロージャーは無くてもいい。別にわれわれがそこまで、求めているわけではない。今の包装の仕方だって、十分だ。袋の口をなんかで別のクリップでつまんでおくか、中身が少なければ、きゅっと袋の先をまとめてしばっておくこともできる。

これもプラスチック削減になっている。
最初にクロージャー廃止に動いたのはヤマザキパンらしい。企業内では社長をはじめ、みんな不安だったらしい。「なんでクロージャーをなくしたんだ!」と、消費者から苦情が殺到するのでは・・・。

しかし、一件もなかった。
すんなり、受け入れられた。
別に、消費者はそこまでクロージャーにこだわってなかった。

これは重要で、実は、「企業が考える消費者の希望と、実際の消費者の希望」とは、別だからでありますね。いっしょのように考えがちですが、実際はちがうのでした。
2

考えてみれば、不思議です。
どうして、「こうではないか」と考えることと、実際の事実とは、異なってしまうのでしょう。
山崎製パンの社員は、消費者研究のプロですよ。でも、予想は外れるのですネ。プロでも失敗する。それが消費者マインド、というやつなのでしょう。

なぜ「会社」側の予測ははずれるのか
~ちっとも読めない消費者の気持ち~


↑こういう本がビジネス本で出版されていそうですが、小学校の6年生が総合的な学習の時間にこうした事例をたくさん調べるのも面白いですよね。

※紙製のクロージャーも開発されたらいいのに。

写真は、イオンのループ。
loo@

SDGsでアジア人差別を考えようとする子がいる

母は日本人で父がネパール人、という子がクラスにいる。
わたしはその父親に一度だけお目にかかった。
すごく瞳がきれいで、物腰のていねいな方であった。

生まれて3歳までの時期をネパールで暮らした子で、うっすらとそのころの記憶があるという。
今は日本に来ていて、国籍も日本人として生活している。
母親は、なんと普通の公立学校の教員である。市内の別の小学校に勤務している。

その子は、SDGsに関心が深く、目標の10番目にある、
『人や国の不平等をなくそう』を研究テーマに選んだ。
SDGs10


そして、それを自分の研究に設定した理由をクラスのみんなの前できちんと発表した。

「いま、アジア人や黄色人種が差別を受けています。これをなくしたい」

彼女はどちらかというと、クラス内ではひょうきんものだ。休み時間に爆笑をとるような面白いキャラなのだが、これを言ったときの彼女の顔つきは本当にまじめで、真剣だった。

東京新聞が、
アジア人差別がアメリカで顕著になってきているが、日本人も例外でなく、被害を訴える日本人が増えているという記事をあげていた。

『コロナ被害が拡大し始めた昨年3月下旬から今年2月末までのアジア系への憎悪犯罪は3795件。加害者は、相手の顔つき、体形だけをみて卑劣な犯行に及んでいるとみられる』(東京新聞)

差別は、不安から始まる。
マウントを取らねば、と焦るのは、自尊心の欠如が原因だ。
自分に満足しているメンタル、自分を肯定するメンタルの持ち主は、相手を肯定する。
それがふつうだ。同じこころの動きだから当然。
自分を否定する者だけが、相手を否定する。

ところで、昔懐かしいイソップ童話。
今はもうすっかり忘れ去られてしまい、子どもも知らない子の方が多い。
イソップは奴隷(といってもギリシャの奴隷は奴隷のイメージとはちょっとちがうらしいが)だったせいか、人間観察をつづけ、この寓話の作者になった。
イソップは、うまく心理学を表現している。
「すっぱいぶどう」や「北風と太陽」など、人間の意識の動きをよくとらえている。
わたしは、このイソップ童話から、差別の元のメンタルを考える授業ができないかな、とよく考えることがある。

人は、強制されると反発したくなる。
つまり、人には自分のことは自分で決めたいという欲求があるようなのだ。

「これあげよう」というと「別に要らない」と言いたくなるが、
「あなたにはあげない」となると、それが無性に手に入れたくなる。
こんな程度のことですら、すぐに心がそう動いてしまうのが人間だ。
いつでも、こころの自由を担保しておきたい。
これは、人間のかなり原始的な欲求だろうと思います。
このような心の働きを「心理的リアクタンス」といいます。

イソップ物語の北風が、旅人のコートを脱がすことが出来なかったのがまさにこれです。
無理やりに脱がそうとすればするほど、そうはさせるものか、と反発しようとするのです。
心理的リアクタンスは日常のあらゆる場面で発生します。
isop


差別のこころを解明し、全人類が、自分の心の動きや状態を、じっくり考えるためにはどうしたらいいのか・・・。

『この目標は、国内および国家間の所得の不平等だけでなく、性別、年齢、障害、人種、階級、民族、宗教、機会に基づく不平等の是正も求めています。』

彼女の長い闘いが、今、はじまろうとしている。
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