私が中学校の頃、最も驚いた事件が、「アヘン戦争」でした。
こんなひどいことを、人間がやるのかと驚きました。
トランプ大統領がメキシコ国境に地上軍を派遣するというニュースがあったとき、また、その大義名分が「麻薬対策」と聞いた時、思い浮かんだのが「アヘン戦争」でした。
私は、中学校の頃に、このアヘン戦争について調べたことがあります。中学校の時の社会科の教師が偉かったですね。おそらく少ない時間数をやりくりして、時間を生み出していたのでしょう。このことだけでかなり時間を使ったと思うんです。
しかし、私には今でも印象に残っている、大切な授業体験になりました。
19世紀に起きたアヘン戦争と、いま現在アメリカを苦しめている「オピオイド危機(フェンタニル危機)」は、時代も場所もまったく違います。しかし、その中身をよく見てみると、驚くほど似た「闇の仕組み」が隠されていることがわかります。
どちらの事件も、「人々に薬物の依存症を植え付けることで莫大な利益を得る」、そして「自分たちが儲けるためなら、他人の国や社会がボロボロになってもかまわない」という冷酷なビジネスの論理で動いているからです。
私が子どもの頃に驚いたのも、この冷酷なビジネス論理と言うものに対して、でした。
かつてのアヘン戦争では、イギリスが中国(清)との貿易で大赤字になったことがきっかけでした。イギリスはその損を取り戻すために、植民地のインドで作らせた麻薬の「アヘン」を、中国へこっそり運び込んで売りつけました。
すると、瞬く間に中国中で中毒者が増え、真面目な役人や農民、さらには国を守るはずの兵士までもが仕事ができなくなってしまったのです。
国のお金は薬代としてイギリスへ流れ、清の社会は内側から崩壊していきました。これはまさに、「他国の人を病気にして支配し、富を奪い取る」という、国が主導した恐ろしい麻薬ビジネスだったと言えます。
いま、この悲劇が形を変えてアメリカで繰り返されています。きっかけは、数十年前に製薬会社が「痛みに効く魔法の安全な薬」として、強力な鎮痛薬(オピオイド)を大量に売り出したことでした。
アメリカは日本のように誰でも安く病院に行ける制度が整っていないため、怪我をした労働者などは、高い治療を受ける代わりに安価な痛み止めに頼らざるを得ませんでした。
こうして「合法的な薬」から始まった依存の連鎖は、やがてより安くて強力な、アヘンの数百倍も強い「フェンタニル」という合成麻薬に取って代わられました。現在では、毎年10万人を超える人々がこの薬物で命を落とすという、戦争以上の被害が出ているのです。
トランプ大統領は、この現状を止めるために「メキシコ国境に軍隊を送り、密輸組織(カルテル)を直接壊滅させる」という非常に強硬な姿勢を見せています。
しかし、歴史を振り返れば、力ずくで押さえ込むだけでは解決しないことがわかります。国内に「薬を欲しがる人(需要)」が大量にいる限り、一つの組織を潰しても、すぐに新しい組織がさらに強力で隠しやすい新種の薬を持って現れるからです。
実際に、フェンタニルよりもさらに数十倍も強い「ニタゼン系」という新型の合成麻薬もすでに広まり始めており、取り締まりとの「いたちごっこ」が続いています。
さらに、こうした混乱の中でトランプ大統領が見せているのは、麻薬対策だけではない大きな野心です。彼は北極圏にある巨大な島「グリーンランド」をアメリカが統治したいという意欲を隠していません。
そこには電気自動車やスマホの製造に欠かせない貴重な天然資源が眠っており、北極を通る新しい航路をコントロールする軍事拠点としても非常に重要だからです。
また、南アメリカ全体に対しても、アメリカが絶対的な主導権を握る「覇権」を広げようとしています。トランプ大統領自身が、【モンロー主義】という、これまた中学校の社会科の教科書に載っていそうな言葉を使ってスピーチしています。これは、ライバルである中国などの影響を南米から追い出し、アメリカの周辺地域を自分のルールで管理しようとする動きです。
結局、アヘン戦争から200年が経った今も、根本にある「支配と利益」の構図は変わっていません。
このことを日本人はどう受け止めていけばいいでしょうか。こういう時に、人間のふだんの思考クセが、表面に出ます。
パワハラ体質の人は、「パワーこそ正義だ」という論展開に賛同しやすい傾向があるそうです。
また、普段の暮らしの中で、あるいは生活の中で、「弱者の立場」を経験している層は、そういった覇権主義を嫌う傾向にあるようです。自分自身のトラウマが影響するんですね。自分自身の価値観をそこに投影してみるのが人間の心理ですから。
50代60代70代の男性の多くが、トランプを応援しているそうです。
また、男性だけでなく、自力でビジネスを展開したり、ある団体の長に登り詰めたような女性も同じ傾向があるようです。
逆に、自分では何もできないことがわかっていて、周囲の人の助けや支援に感謝しながら、何とか生きている、という実感を持っている人たちは、トランプ大統領のような頑固で、周囲の迷惑を顧みない強引な政策は、見ていられないものに映るようです。
この両者は、共通の言語を持ちませんから、いつまでたっても理解し合うことがありません。
日本人や米国人を問わず、ある一定の、彼を支持する層の人々には、トランプ大統領の頑固で意地を張っている姿は、「凜としたリーダーのとるべき姿」として見えているのかもしれません。
「強さを経験し、それを正義としてきた人たち」が、自分たちの価値観を守るために大統領を支持している……。
そう考えると、この騒動は単なる政治問題ではなく、「アメリカンドリームによる成功哲学」と「アンクルトムの小屋から続く差別を嫌う人権意識」の最終戦争のような様相を呈していると思えてきます。

こんなひどいことを、人間がやるのかと驚きました。
トランプ大統領がメキシコ国境に地上軍を派遣するというニュースがあったとき、また、その大義名分が「麻薬対策」と聞いた時、思い浮かんだのが「アヘン戦争」でした。
私は、中学校の頃に、このアヘン戦争について調べたことがあります。中学校の時の社会科の教師が偉かったですね。おそらく少ない時間数をやりくりして、時間を生み出していたのでしょう。このことだけでかなり時間を使ったと思うんです。
しかし、私には今でも印象に残っている、大切な授業体験になりました。
19世紀に起きたアヘン戦争と、いま現在アメリカを苦しめている「オピオイド危機(フェンタニル危機)」は、時代も場所もまったく違います。しかし、その中身をよく見てみると、驚くほど似た「闇の仕組み」が隠されていることがわかります。
どちらの事件も、「人々に薬物の依存症を植え付けることで莫大な利益を得る」、そして「自分たちが儲けるためなら、他人の国や社会がボロボロになってもかまわない」という冷酷なビジネスの論理で動いているからです。
私が子どもの頃に驚いたのも、この冷酷なビジネス論理と言うものに対して、でした。
かつてのアヘン戦争では、イギリスが中国(清)との貿易で大赤字になったことがきっかけでした。イギリスはその損を取り戻すために、植民地のインドで作らせた麻薬の「アヘン」を、中国へこっそり運び込んで売りつけました。
すると、瞬く間に中国中で中毒者が増え、真面目な役人や農民、さらには国を守るはずの兵士までもが仕事ができなくなってしまったのです。
国のお金は薬代としてイギリスへ流れ、清の社会は内側から崩壊していきました。これはまさに、「他国の人を病気にして支配し、富を奪い取る」という、国が主導した恐ろしい麻薬ビジネスだったと言えます。
いま、この悲劇が形を変えてアメリカで繰り返されています。きっかけは、数十年前に製薬会社が「痛みに効く魔法の安全な薬」として、強力な鎮痛薬(オピオイド)を大量に売り出したことでした。
アメリカは日本のように誰でも安く病院に行ける制度が整っていないため、怪我をした労働者などは、高い治療を受ける代わりに安価な痛み止めに頼らざるを得ませんでした。
こうして「合法的な薬」から始まった依存の連鎖は、やがてより安くて強力な、アヘンの数百倍も強い「フェンタニル」という合成麻薬に取って代わられました。現在では、毎年10万人を超える人々がこの薬物で命を落とすという、戦争以上の被害が出ているのです。
トランプ大統領は、この現状を止めるために「メキシコ国境に軍隊を送り、密輸組織(カルテル)を直接壊滅させる」という非常に強硬な姿勢を見せています。
しかし、歴史を振り返れば、力ずくで押さえ込むだけでは解決しないことがわかります。国内に「薬を欲しがる人(需要)」が大量にいる限り、一つの組織を潰しても、すぐに新しい組織がさらに強力で隠しやすい新種の薬を持って現れるからです。
実際に、フェンタニルよりもさらに数十倍も強い「ニタゼン系」という新型の合成麻薬もすでに広まり始めており、取り締まりとの「いたちごっこ」が続いています。
さらに、こうした混乱の中でトランプ大統領が見せているのは、麻薬対策だけではない大きな野心です。彼は北極圏にある巨大な島「グリーンランド」をアメリカが統治したいという意欲を隠していません。
そこには電気自動車やスマホの製造に欠かせない貴重な天然資源が眠っており、北極を通る新しい航路をコントロールする軍事拠点としても非常に重要だからです。
また、南アメリカ全体に対しても、アメリカが絶対的な主導権を握る「覇権」を広げようとしています。トランプ大統領自身が、【モンロー主義】という、これまた中学校の社会科の教科書に載っていそうな言葉を使ってスピーチしています。これは、ライバルである中国などの影響を南米から追い出し、アメリカの周辺地域を自分のルールで管理しようとする動きです。
結局、アヘン戦争から200年が経った今も、根本にある「支配と利益」の構図は変わっていません。
このことを日本人はどう受け止めていけばいいでしょうか。こういう時に、人間のふだんの思考クセが、表面に出ます。
パワハラ体質の人は、「パワーこそ正義だ」という論展開に賛同しやすい傾向があるそうです。
また、普段の暮らしの中で、あるいは生活の中で、「弱者の立場」を経験している層は、そういった覇権主義を嫌う傾向にあるようです。自分自身のトラウマが影響するんですね。自分自身の価値観をそこに投影してみるのが人間の心理ですから。
50代60代70代の男性の多くが、トランプを応援しているそうです。
また、男性だけでなく、自力でビジネスを展開したり、ある団体の長に登り詰めたような女性も同じ傾向があるようです。
逆に、自分では何もできないことがわかっていて、周囲の人の助けや支援に感謝しながら、何とか生きている、という実感を持っている人たちは、トランプ大統領のような頑固で、周囲の迷惑を顧みない強引な政策は、見ていられないものに映るようです。
この両者は、共通の言語を持ちませんから、いつまでたっても理解し合うことがありません。
日本人や米国人を問わず、ある一定の、彼を支持する層の人々には、トランプ大統領の頑固で意地を張っている姿は、「凜としたリーダーのとるべき姿」として見えているのかもしれません。
「強さを経験し、それを正義としてきた人たち」が、自分たちの価値観を守るために大統領を支持している……。
そう考えると、この騒動は単なる政治問題ではなく、「アメリカンドリームによる成功哲学」と「アンクルトムの小屋から続く差別を嫌う人権意識」の最終戦争のような様相を呈していると思えてきます。
