月曜日は、とくべつな日です。

月曜日の朝、子どもたちの様子をみると、その子の土日の過ごし方が、なんとなしに伝わってきます。

最初から、わたしに何かを言いたくて、にこにこしながら、近づいてくる子がいます。

また、そうでなくとも、満足げな子もいます。

なんとなく、眠そうにして、ボーッとしている子を見ると、昨日はいつ寝たのかな~と心配になる。


印象に残る子がいます。

友達とおしゃべりしている子でも、目が生き生きとして、たいへんに友達に丁寧に接している子です。

友達の話を聞いて、目をまるくして、

「○○くん、すごいね」

と話をしている子は、本人の満足度が高いのでしょう。

他の子の話を、聞いてあげられる余裕があるのです。

聞いてもらった子も、うれしかったようで、そこにあっという間に、イキイキとして、明るい楽しげな空間が生まれてきます。

そういう雰囲気をサッとつくってしまう子が、Yくんです。

Yくんは、なかなか利発そうな子で、いつも大きい目をくりくりさせている子です。髪の毛が、ビートルズのリンゴ・スターみたいで、ちょっとかっこいい。

Yくんのことでは、とても興味深いことがありました。

Tくんという子がいるのですが、彼はいわゆる「すぐに友だちを叩いてしまう」子で、女の子からは少し、敬遠されています。

同じ保育園の女の子の口癖は、入学時から、

「もう!Tくんったら!」

でした。

さらに、

「Tくん!やめてよ!」

です。

そう言われると、Tくんもプライドがあるから、そういう女の子の口を封じるために、さまざまに動いてしまうし、それが先生に見つかると、大体はTくんが悪いことになって、思い切り叱られてしまいます。

そういう保育園時代を過ごしていたものだから、Tくんは、入学してからもずっと、さみしいのです。





そのTくんにとって、尊敬できる友だちが、リンゴ・スターのYくん。


「先生、これ、Yくんのと、同じだよ」


と、得意げに、Tくんが自由ノートを見せてくれたことがあります。

お絵かきの好きな1年生ですから、休み時間になると、自由ノートにお絵かきする子がたくさん。
自分のノートに、恐竜やら、ロボットやら、なんでも落書きをしていると、あっという間に、ノートを消費してしまう。

Tくんも、お母さんに言って、新しいノートを買ってもらっていました。
これまでのノートには、白いところがなくなるくらいに、ぎっしりと、恐竜を書いていましたから。

その新しいノートを、朝、わたしに見せにくると、

「これ、Yくんと同じだよ。同じ赤い花があるし、恐竜もあるしね。これ、漢字?これなんて読むの?」

Tくんは、自分で気になったことを、すべて言わずにおれない衝動性があります。だから、私に話す時も、一度に、一気に、3つも4つも、話をします。

Yくんと同じノートを買った、ということが自慢でならないらしく、わたしに見せた後、教室に「おはよう!」と入ってきたYくんに、さっそく見せていました。

「Yくん!赤い花でしょう。このノート、Yくんと同じだよ。昨日、アピタで買ったんだよ。ね、ぼくのお母さん、アピタの近くで働いているから」

そこまでを一気に言うと、Tくんは、嬉しそうにニコニコしています。

ショート・ヘアのYくんも、最後まで聞いてあげると、

「ああ、いっしょだねー、赤い花だしね。ぼくのお母さんも、アピタで買ったんだよ。いっしょだねー」



この対応を聞いていると、Yくんのことが好きなTくんの、感性は正しいのだな、と分かります。

Yくんは、Tくんが話してほしいことを、的確に話している。

コミュニケーションが、正しい。

同じ1年生で、こういうコミュニケーションをとれる子がいるのです。

なぜかな、と私はそこが気になります。

同じ1年生、同じような男の子でも、まったくTくんと、コミュニケーションがかみ合わない子もいるわけですから。




もう少し、Yくんのことを書きますと、

Yくんは、どうやら、人の気持ちが分かるようです。

なぜそう思うか。

時折、教師の私にはすぐにパッと、分からないようなことが、教室で起きるのです。

1年生の教室は、そういうことが、頻繁に起きる。

たとえば、

「座りなさい」

といっても、なんでか、なかなか座らない子がいる。

なぜか、プリントが1枚、余る。

なぜか、Kくんの水筒が、教卓にのっかっている。

なぜか、R太くんが、泣いている。

なぜか、水の入ったバケツが、廊下に出ている。

・・・・・・



私が職員室から帰ってくると、ほとんど毎回、不思議な光景が出現しています。

まあ、それが1年生なのでしょう。


そうしたときに、活躍するのが、リンゴスターのYくん。

「先生、R太くんね、S紀ちゃんが宿題プリントふんじゃったから、泣いてるみたい」


とっくに宿題プリントは机の中にしまわれているから、わたしは何が原因か、見ただけでは分からない。
ホームズじゃないんだし・・・。R太くんが、泣きじゃくっているときは、ちっとも分からない。
プリントが1枚あまったのも、どこかで列がずれて、もらわない子がいたらしいけど、それもYくんが、

「なんか、見てたら、U美さんのところから、ナナメに行ったんじゃないかなと思う」

と、教えてくれない限り、迷宮入りであります。



なかなか座らない女の子、「どうして座らないの?」と聴いても、うまく説明できない。

Yくんが、横から、

「先生、たぶん、うしろのTくんが、さっき鉛筆でつつくまねをしてたから、それがイヤなんだと思う」



女の子は、「Tくんにつつかれた」なら、はっきり述べることができたでしょうが、つつくマネをしていただけですから、ずばりと「イヤ」ということが言えずに、すこし困惑状態だったのでしょう。

それを、ちゃんとフォローしてくれるのが、Yくん。




気を回すとか、気を遣うとか、親切だとか、気働きができる、というの。

そういうニュアンスではない。

Yくんは、人と、ただしく、会話ができる。

相手が、「そうしている」。・・・で、Yくんは、相手の「そうしている」の真意はなにか、と知ろうとしている。

・・・ですね。(それがなかなか難しいわけです)