当時の私には、すべてが学びの対象と感じられていました。若い人はたいがい、そうでしょう。

やってみてわかったことは、私は業務の成績を上げるというよりも、この仕事が人間にとって、あるいは若者にとって、どのような意味があるのかを文章にしたり、かんがえたりすることのほうが面白いと思ったことです。これは、私の適性の発見につながりました。

その後、今度は転職して野菜の小売業を行いました。
これもまた、学校の勉強のような感覚で仕事を行いました。実地演習のような雰囲気です。

トラックを運転し、家をまわり、ご家庭の玄関先で野菜を売るのです。大阪はすみずみまで回りました。おかげで大きな道路を覚えたばかりか、どんな場所に、土地に、どんな人々が暮らしていて、昼間暇そうにしている人もいれば、忙しそうな人もいるし、経済的にもさまざまなレベルで人は暮らしているということが分かりました。また、非常にたくさんの奥様方とお話をするのは、面白いばかりか、なるほどと思うことも多く、勉強になりました。

当時の私は仕事も頑張っていたのですが、こういった仕事は非常に大切だけど、自分はどちらかというとこのことで儲けようという気分はどうしても湧いてこないな、と感じておりました。
当時の自分のモチベーションは、何だったのだろう、と振り返ってみると、

ここから何を学んだか

を、文章にしたり人に話したり、その仕事から社会経済の仕組みや人の集団の変化を考える、ということのほうが結局は大きな関心事だということがわかったのです。車を運転しながら、アレコレとメモをしたり、考えたりしてましたね。

とうとう腰を痛めてこの仕事に見切りをつけたのですが、また転職しました。
今度はインターネット関連の仕事や、新聞を作る仕事を行いました。私としては、これは非常に面白みがありました。徐々に、自分のモチベーションが強まっているのを感じました。インターネットの仕事は、情報の伝達、ということにつながります。わたしはその部分でも興味が強く、人と人がどう情報の伝達を行うのか、その社会的な意味はなにか、と考えてばかりいました。新聞づくりはもう面白くて仕方がありませんでした。文章を書くのは、自分にとって中毒のようなものでしたから。

途中で、面白そうなJAXAの相模原キャンパスに常駐する、情報セキュリティ担当の仕事をしましたが、これもまた渋くて粋な仕事でした。

そこまで進むと、もう28歳になっておりましたので、ここらであれこれと考えた結果、要するにわたしの興味関心は、どうしても社会科学的な分野になってくるのがわかりました。
残りの人生は、そこに深くリンクする仕事でありたい。社会論を考え続けたい、人間にとって有効な社会システムを、ずっと人と話しながら考え続けたい。

このモチベーションは、どうにも下がらないことが、これまでの経緯で自分にわかっていました。

で、再び転職して、選んだのが教師という仕事です。

毎日、学級という人間社会がどう動くのか、何が有効なのか、システムとして大事なのはなにか、人と人とが話し合うためにはなにがポイントになってくるのか。お互いがわかりあうために必要な手段とはなにか。

考え続けるのが面白くて仕方がありません。

でも、この教師という仕事にたどりつくためには、30歳までの10年間が必要でした。
このくらいは必要でしょう。20歳ですぐにたどりつかなくてもいいのではないでしょうか。
もちろん、最初からほぼ自分の計画が立てられていて、同じ分野を少しづつ耕していける人もいます。そういうことが可能な人は、とても幸運だと思いますね。

まあしかし、時間をかけてゆっくり見つけることもできる、ということです。
むしろ、多くの人にとっては、最初からそのくらいの計画でいる方が無理がないような気もします。大事なのは、20代は、観察しつづける、まなびつづける、ということではないでしょうか。

自分が関心をもっているのはなにか、と。

決めつけないで、早わかりしないで。
できるだけ、ちょこちょこと、多方面に興味を向けて、味見をしつづけることです。そして、ワンランク難しいことに挑戦してみると、面白さが見えてくる。少しだけ頑張りながら、変化を感じ取りつつ、自分の中に一貫してつづくもの、モチベーションが下がらない対象を見つける。

わたしはどちらかというと、常識的なものはつまらない、という妙な思い込みを持っていますから、同じことをしゅくしゅくとつづけるのは得意ではありませんでした。
嫁様はまったく逆で、新しいことはしんどいので、同じことを続けていくことこそが幸福だと断言しています。それもまた、正しいのです。

自分のタイプを見極めて、モチベーションができるだけ持続しやすそうな、興味対象を発見すること。

そして、そこに関連する業務・仕事を見つけられたなら、幸福度は高くなると思います。

がんばれ!息子!

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