午前11時ごろだっただろうか。
玄関のチャイムが鳴り、嫁様が出た。
わたしはリビングでしらべものをしており、ほとんど意識に上らなかった。
嫁様が困惑したようにもどってきて、
「なんか、パソコンの?インターネットがどうとか・・・?」
とわたしに変わってほしいサインを出した。
アポなしのドアチャイムだからおそらくセールスだろうと思うが、一応出てみた。
すると、名刺を出すかと思いきや話をしだしたが、
1)この近辺でケーブル設置の工事をした
2)そのおかげでインターネットが高速になる
3)あなたの家はその恩恵を受けられる
4)なにも機械を変える必要はない
5)金額も月に2000円程度安くなる
という。
相手がふと口をつぐんだので、話が終わったのかと思い、てっきり
「ごくろうさま」
と頭を下げて、安くなるし速くなるのはありがたいなあと思いながらドアを閉めようとすると
「いやいや、ご主人、わたしはあやしいものではないですから」
と手を顔の前にもってきて、高速で左右に振った。
わたしは
「あやしいとは思ってないですから大丈夫です」
と、こちらも慌てて言った。
本当に、あやしいとは思わなかったからである。
というか、話が終わったのではなかったのか、と不思議になった。
そして、ではつづきがあるのかしらん、はて、と思った。
つぎに、会社の名前を言い、
「テレビとかでも放映していますから、ご存じかと思いますが」
という。
「今、キャンペーンで全国でサービスを展開中です」
と胸を張った。
ところが、わたしはほぼテレビを見ないのである。
家にテレビはあり、受信料もきちんと納付しているが、わたしは見ない。
というか、見る暇も時間もない。全国の教員がそうだと思うが、帰宅したら次の日の授業の準備を綿密に行う。あとは風呂入って寝るだけしかしない。
わたしは頭を下げ、(ほんとうに悪い気がしたので)
「ごめんなさい。テレビはもう5年以上見ていないですね。体感上ですけど」
と言って、マスク越しに自嘲してみせた。
本当は、NHKのブラタモリを見た。2年くらい前だろうか。
このブログにもそのことを記事にしていると思う。
すると、それが怪しいと思ったのか、なおもテレビでやっているらしいその会社のCMのことを、少し話をして、念を押し、
「この地域にもすごく広がっているんですよ。有名ですよ。どんどんサービスが増えています」
とのこと。
わたしは何も知らない。その会社も、CMも、なにも分からない。
ただひたすら、恐縮するだけである。
ともあれ、この男がしなくてはならないのは、「結論を言うこと」であろう。
小学校5年生なら、国語の教科書で習う。
だんだんとわたしは、自分がどこかの不思議なファンタジーの世界であるかのように感じ始めた。
こうして休日の昼間に、自分が「テレビを見ない変人である」件を謝っているのが、妙に思えてきたのだ。
5年生の国語では、相手に何かを伝える際には、まず結論を言い、その理由を順序だてて説明し、最後にもう一度、結論を言うことを教える。
わたしはこの男に、
「なにしろ、すごいサービスがはじまるんですね。おまけに安くなる。良かったです。ありがとう」
と再度いい、ドアを閉めようとした。
すると、さらに慌てたのか、今度は半笑いでエヘヘヘヘという感じの声を出し、
「ですから、わたしは怪しいものではなく・・・」
と、さっきのつづきである。
5年生の国語でいえば、谷村俊太郎の詩なのであればわかる。
繰り返し=リフレインは効果的な手法だ。
リフレインは、独特のリズムと効果を生み出す。
作者の意図を強調することにもなる。
しかし、「怪しくないです」のリフレインには、あまり意味がない。
先ほどからこの男は結論をなんら言わず、自分が怪しくはない、ということと、テレビで有名な会社のものである、ということ以外に中身がなかったのであります。
わたしがしたことは、テレビを見ないことを謝ったことと、安くなるのはありがたい、という感謝である。
わたしは再度、「あやしいとは思いませんよ」と、あいまいにほほえみながら伝えた。
すると、契約をするから住所と電話番号を書くように、と初めて言うのでありました。
セールスの人は、5年生の国語を思い出してほしい。
話はもっと早く終わると思います。
玄関のチャイムが鳴り、嫁様が出た。
わたしはリビングでしらべものをしており、ほとんど意識に上らなかった。
嫁様が困惑したようにもどってきて、
「なんか、パソコンの?インターネットがどうとか・・・?」
とわたしに変わってほしいサインを出した。
アポなしのドアチャイムだからおそらくセールスだろうと思うが、一応出てみた。
すると、名刺を出すかと思いきや話をしだしたが、
1)この近辺でケーブル設置の工事をした
2)そのおかげでインターネットが高速になる
3)あなたの家はその恩恵を受けられる
4)なにも機械を変える必要はない
5)金額も月に2000円程度安くなる
という。
相手がふと口をつぐんだので、話が終わったのかと思い、てっきり
「ごくろうさま」
と頭を下げて、安くなるし速くなるのはありがたいなあと思いながらドアを閉めようとすると
「いやいや、ご主人、わたしはあやしいものではないですから」
と手を顔の前にもってきて、高速で左右に振った。
わたしは
「あやしいとは思ってないですから大丈夫です」
と、こちらも慌てて言った。
本当に、あやしいとは思わなかったからである。
というか、話が終わったのではなかったのか、と不思議になった。
そして、ではつづきがあるのかしらん、はて、と思った。
つぎに、会社の名前を言い、
「テレビとかでも放映していますから、ご存じかと思いますが」
という。
「今、キャンペーンで全国でサービスを展開中です」
と胸を張った。
ところが、わたしはほぼテレビを見ないのである。
家にテレビはあり、受信料もきちんと納付しているが、わたしは見ない。
というか、見る暇も時間もない。全国の教員がそうだと思うが、帰宅したら次の日の授業の準備を綿密に行う。あとは風呂入って寝るだけしかしない。
わたしは頭を下げ、(ほんとうに悪い気がしたので)
「ごめんなさい。テレビはもう5年以上見ていないですね。体感上ですけど」
と言って、マスク越しに自嘲してみせた。
本当は、NHKのブラタモリを見た。2年くらい前だろうか。
このブログにもそのことを記事にしていると思う。
すると、それが怪しいと思ったのか、なおもテレビでやっているらしいその会社のCMのことを、少し話をして、念を押し、
「この地域にもすごく広がっているんですよ。有名ですよ。どんどんサービスが増えています」
とのこと。
わたしは何も知らない。その会社も、CMも、なにも分からない。
ただひたすら、恐縮するだけである。
ともあれ、この男がしなくてはならないのは、「結論を言うこと」であろう。
小学校5年生なら、国語の教科書で習う。
だんだんとわたしは、自分がどこかの不思議なファンタジーの世界であるかのように感じ始めた。
こうして休日の昼間に、自分が「テレビを見ない変人である」件を謝っているのが、妙に思えてきたのだ。
5年生の国語では、相手に何かを伝える際には、まず結論を言い、その理由を順序だてて説明し、最後にもう一度、結論を言うことを教える。
わたしはこの男に、
「なにしろ、すごいサービスがはじまるんですね。おまけに安くなる。良かったです。ありがとう」
と再度いい、ドアを閉めようとした。
すると、さらに慌てたのか、今度は半笑いでエヘヘヘヘという感じの声を出し、
「ですから、わたしは怪しいものではなく・・・」
と、さっきのつづきである。
5年生の国語でいえば、谷村俊太郎の詩なのであればわかる。
繰り返し=リフレインは効果的な手法だ。
リフレインは、独特のリズムと効果を生み出す。
作者の意図を強調することにもなる。
しかし、「怪しくないです」のリフレインには、あまり意味がない。
先ほどからこの男は結論をなんら言わず、自分が怪しくはない、ということと、テレビで有名な会社のものである、ということ以外に中身がなかったのであります。
わたしがしたことは、テレビを見ないことを謝ったことと、安くなるのはありがたい、という感謝である。
わたしは再度、「あやしいとは思いませんよ」と、あいまいにほほえみながら伝えた。
すると、契約をするから住所と電話番号を書くように、と初めて言うのでありました。
セールスの人は、5年生の国語を思い出してほしい。
話はもっと早く終わると思います。