あなたは、70キロほど離れた街で開催される、バスケットボールの試合を観戦する計画を立てました。あなたはすでに前売りチケットを5000円で購入しています。ところが、試合当日の天候は猛吹雪で試合会場に行くのはとても危険です。さて、あなたはどうしますか。
1:試合会場に行く
2:暖かいあなたの家でテレビ観戦する
みなさん、どちらを選びます?
サンクコスト、という言葉があります。
もしかしたら「コンコルド効果」という言葉の方が知られているかもしれない。
わたしは幼い時に図鑑でコンコルドを見たときから、
「大人になったらこれに絶対乗る!」と決めていた。
そういう少年は多かったと思う。なぜなら、音速以上で飛ぶ唯一の民間飛行機だからだ。
マッハ2で飛ぶコンコルドは、音を置き去りにして飛ぶために、乗客は完全な静寂を体験する。まったく音のしない乗り物、というわけだ。聞いただけでワクワクした。
いつか音速越えを体験してみたい。わたしはそう思ったが、その夢はかなえられない。
なにしろ、もうコンコルドは全機、廃棄されている。
なぜそんな立派な超音速旅客機が廃棄されたかというと、
コストがかかりすぎたからであります。
実は、そのことは、コンコルドの設計段階からわかっていた。
これ、飛ばしたらえらい金がかかるぞ、と。
それに、乗りたいという客は多いだろうが、たかが1時間程度早いだけで10倍の料金を払おう、という客がいるだろうか。チケットはどの席も当時の価格で100万円以上した。
コンコルドは世界一の赤字運営となった。飛ばせば飛ばすほど、会社は倒産に近づくのであります。
なぜ、そんな欠陥だらけの赤字旅客機をつくろうとしたかというと、これはもう、第二次世界大戦中の日本と同じで、設計や実験の段階で相当なお金をかけてしまっていたからで、
もうこれだけお金を使っちゃった以上、
もうこれだけエネルギーをかけちゃった以上、
いまさら、あとにはひけないよ
という感覚があったからであります。
これを、コンコルド感覚、コンコルド効果、というのですね、心理学の世界では。
近頃は、こうしてすでに支払ってしまった資金や労力のことを、「サンクコスト(埋没資金)」とよぶのでありました。くわしく書くと、【埋没費用 とは、事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小・中止をしても戻って来ない資金や労力のこと】だそうです。(わたしは最近知りました)
合理的に考えると、リスクとペイをしっかりみて、さきほどのバスケの試合でも、事故の危険や生命のリスク等を考えれば「家で安全にテレビで試合を楽しむ」ことができるわけだが、すでにお金を支払ってしまい、それはもう取り返せないのですが、惜しい、という気持ちが湧いてきて、危険だけどバスケの試合に出かける方を選ぶ人が多いのだそうです。
では、次の場合はどうだろうか。
試合当日の天候は、先ほどと同じく危険な吹雪です。ただ、観戦チケットは運よく友人からプレゼントされたものです。さて、あなたはどうしますか。コストがかかっていないと考える人がほとんどなので、もうすでに引き返せない、とか、ここまでがんばったんだから、という思考は働きませんね。当然、2を選ぶでしょう。
1:試合会場に行く
2:暖かいあなたの家でテレビ観戦する
なぜこういう話を出したかと言うと、こういうのを、小学生も勉強した方がいいのでは?と思うからです。道徳なのか、なんなのかナ・・・
パラリンピックやオリンピックも、サンクコストが惜しい、という気持ちで選んでないかな・・・
ちょっと不安になりますね。
こんだけ準備したんだしとか・・・まさかね。
さて、おまけにもう一つ。
みなさんは、次の事例、どう思いますか?
あなたは、国家資格が必要な、ある職業に憧れ、学生時代に必死に勉強しました。猛勉強の末に国家資格を獲得し、あなたは憧れの職業に就けました。
3年間ほど勤めたものの、その仕事はあなたが思っていたような仕事ではなく、憧れた当初の志も失われてしまいました。働く中で、他に興味のある仕事も見つかり、「他のことに挑戦してみたい」という気持ちも強くなっていきます。こんなとき、あなたならどうしますか。
これ、正解はないと思うのですよ。
自分でとことん考えて、そうするしかないのかな、と。
しかし大事な点がある。これらを判断する際に、くれぐれもサンクコストにとらわれないこと。
できるだけ、コンコルド効果に陥らない、ということが、とても大事だと思うネ。
