オリンピックにあまり興味関心のなかった私にも、テレビや新聞報道で情報が耳に入る。小山田さんや小林賢太郎さんのことは週刊誌やワイドショーに限らず、ずいぶん話題になっているようだ。

そもそも今回の五輪には、当初からいろんなケチがついていた。
振り返ると、こんな感じ。
■2015年7月:新国立競技場の計画「白紙に」
■2015年9月:エンブレムのデザインも白紙に
■2017年4月:新国立競技場の現場監督が自殺
■2019年1月:JOC会長の贈賄疑惑
■2019年4月:当時の五輪相が問題発言で辞任
■2021年2月:女性蔑視発言で森喜朗会長が辞任
■2021年3月:容姿を侮蔑する企画を提案、開閉会式の統括が辞任
■2021年3月:聖火リレーがスタート、辞退続出
加山雄三さん、斎藤工さん、黒木瞳さん、TOKIO、広末涼子さん、香川照之さん、藤井聡太さんらが辞退。
■7月19日:開会式の作曲担当、小山田圭吾さんが辞任
■7月20日:関連プログラムに出演予定の絵本作家が出演辞退
7月22日:開閉幕式の演出担当者、ユダヤ人虐殺をネタにしていたとして元お笑い芸人の小林賢太郎氏を解任

このあたりの経緯を伝える報道を、NHKで見ていたとき、ふと浮かんだのは、
「これ、心がどんどん離れていった、ということだな」
ということ。

そして、「プロジェクトXとは、まったく正反対の世界だ」と思った。

心がどんどん寄ってくる、集まってくる、知恵が知恵を呼び、奇跡を起こしていく、ということがある。とくに、みんながなんとしても成功させたい、という思いになると、それが伝播するのか、クラス中がそうなる、学校中がそうなる、ということがある。

高校の文化祭がそうだった。

いろんな困ることが起きても、その都度、どこからか「なんとかしよう、のりこえよう」という知恵が集まってくる。人も寄ってくる。
なぜ人が集まってくるかというと、みんな、そこにかかわりたい、という気持ちがあるからだ。
だから、自分の用事が済んでも、なんとなく体育館の方に集まってきて、演劇のメンバーに声をかけてから帰宅するとか、部室の横で、巨大な「はりぼて」に糊(のり)を塗っている子に「がんばれよー」と声をかけ、様子をうかがってから帰宅するとか、していた。

そうすると、なんか困ったことがあっても、知恵が寄るんですね。
〇〇がないんだけど・・・というと、知っている子がいないか、とクラスに報告してくれる子がいて、するとふだんは面識ないけれど、たしか3組のTくんが持っていたと思う、とか情報が集まってきて、Tくんが必死になって翌早朝に届けてくれたり・・・簡単に言えば、そういうようなこと。

こういうモードになると、不思議とさまざまなことが、どんどんと雲が晴れるようにして起きてくる。みんながみんな、まっしぐらになっているから、他の人の動きがよく見えるし、感謝の念も湧く。「ああ、あのメンバーが、ここ、掃除してくれてたんだ!」もう、感謝しかない。


小学校でもそうですね、なにかの発表を成功させよう、と本気が伝わり始めると、みんなの嗅覚やら目つきやらがするどくなって、

「ねえ!〇〇ということにしようよ!」

というアイデアもたくさん出てくるようになる。
これまでの日本は、そういうことが多かったのではないかと思うね。
プロジェクトXなんて、古い番組だけど、あれを見ていたら、そういう仲間の知恵が不思議と集まって、なんとかして苦境を脱する、という奇跡が起きる。そういう奇跡が、各分野・各地域でたくさん起きてた、ということがわかる。

ところが今回の五輪は、心が寄らなかったみたい。できたらかかわりたくない、という気持ちがあるから、トヨタの会長さんまでが開会式に出席しなかった。
心が寄らなくなったイベントは、苦しい。
心が集まらなくなった目標は、だれもその達成を、のぞまなくなる・・・。

人は、自分の心に、嘘はつけない。
本当はやりたくないけど、忖度して顔だけ笑って、なーんて。
そんなウソ、いつわり、まんちゃくが、続くわけない。

問題は、最初はみんな、やる気に満ちていた、ということ。
だってみんな拍手してたもの。テレビでも、芸能人が本当に晴れやかな笑顔で、五輪の開催を喜んでいた。それが、いつの間にか、「かかわりたくねえな」になっちゃった。

そのターニングポイントはどこか。
リーダーが消えたところかな、と個人的には思う。
リーダーというのは、みんなの心が寄るところ、中心にいてくれる人。
みんながやがて集まるはずのところ、その中心にいてくれる人。
部屋の中心、囲炉裏のあるようなところに、どっか、と腰を下ろしてるイメージ。
それが、だれもいない、と感じたら、だれも寄り付かなくなる。

だから担任は、いつも教室で、その囲炉裏の火を絶えないように、消えないように、どっしりとかまえて、薪をくべて、うちわであおいで、じっとふんばって見つめていないといけない。それが学級担任のいちばんの姿。心に夢を期して、火をじっと見ているのが、仕事なのだ。

石原都知事もいなくなり、猪瀬都知事も・・・
みーんないなくなろうとしていて、だれも囲炉裏の火をみてる人がいないんだもの。
これじゃあ、プロジェクトがプロジェクトにはならんわね。
「United By Emotion」 が大会のモットーでしたが・・・

やっぱ、こころが整わないと、形をととのえようとしたってダメですよね。

薪をくべる