今年は家庭科の調理実習ができずに困っていた。
なにせ、市の教育委員会から許可が下りないのである。
コロナ感染の状況があるから、許可しない、と校長が言われてきた、とのこと。
それが、なぜか2学期末になって許可が下り、調理実習をすることになった。
5年生で学習するのは、ご飯を炊くことと、おみそ汁をつくること。
うちもやろうと思っていたのだが、間に合わなかったので、結局3学期にやることにした。

子どもたちに尋ねてみると、ごはんをしっかりと炊いた経験のある子が半数しかいない。
そこで、冬休みに、自分で多少、トライをしてきてもらうことにした。
まだ学校ではしっかりと習っていないが、事前に、家で勉強してきてほしい、と。
そのことを、週末に出すプリント(家庭への通知)で書いておいたところ、

気の利いたお母さまたちのなかで、

「ちょうどいいわ。ごはんはあんたに任せるから」

と、すっかり小学生に自宅のごはん炊きを任せる、というご家庭が出たらしい。
まだ冬休みにならないうちから、ご飯を炊くことを命ぜられてしまったと、子どもが嘆いていた。

Aさんは、上記のようなことから、家でのごはん炊きをまかされてしまい、
毎日夕方になるとご飯をといで、給水させて、炊いているらしい。



だが、彼女は良くないことを思いついた。

「うちの家族が、コロナにかかっていないか、試すことにした」

恐ろしい。
科学の心が、こんなところで発揮されてしまうとは。

家族の味覚と嗅覚を試すために、彼女のとった実験計画は、
ご飯を炊飯器にセットした後、なにかを混ぜる、ということであった。


1日目 塩をふりかける  ⇒ 気づかれなかった
2日目 もっと多く塩をふりかける ⇒ しょっぱい、と弟に気づかれる 父もおかしい、と。

「この時点で、コロナ感染が疑われるのは、母ということになりました」

3日目 こんぶを入れた ⇒ 家族全員が 「なんか、なんか・・・へんだねえ」

4日目 抹茶の粉を入れた ⇒ 弟だけが「なんかお茶っぽい香りがした」

「この時点で、弟だけは確実に感染していないことが分かりました」

5日目 アイスを入れた ⇒ だれも気づきませんでした。


この実験は、Aさんが

「なんか、自分でご飯を食べるのが厭(いや)になってきたので止めました」

ということでたった一週間、それも冬休み前に終了してしまった。

日記には、

「うちでは母だけが何も気づきません。コロナ以前に、母には本当に味覚があるのだろうか、うちの料理は大丈夫か、と本気で心配になりました」

と書いてあった。

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