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~文字起こし~
今日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。
え、いきなりですが、ヤクザさんの話から始めたいと思います。(保護者の皆さん笑)
小学生の頃のことです。
わたし、当時5年生だったと思います。
ヤクザに会うのですよ。銭湯で。
うち、家に風呂があったのですけど、近所に山之内くんという子がいまして。彼の家はお風呂が壊れて、しばらくの間、銭湯に通ってた。一人で通ってたんですけど、つまらないので、友達のわたしを誘うようになりました。
私も家で風呂に入るのはつまらないし、山之内君と遊べるので、喜んでいっしょに行ってました。母親は金がかかる、とこぼしていましたが。
山之内くんがお風呂で恐れていることが一つありました。近所のヤクザに会うのですよ。背中に、でかい鯉の彫物がありました。
で、そのヤクザは、私たちを見つけると、
「よし、今日はおれがお前たちを鍛えてやる」
とか言って、サウナ室へ入れ、とか、指示するわけです。
我々はなんでか知らないけど、お付き合いしなければならない。
サウナに付き合い、その後は風呂の中に何秒沈んでいられるか、というやつ。
ヤクザはやらないんですよ。わたしと山之内くんだけにやらせるの。
たまに、近所の小学生とかが運悪く加わることがありましたが、山之内君とわたしは彼にとっても気に入られまして、よくその根性を叩き直す、という訓練をやらされました。
山之内君はそれでもその時間に風呂に入らなければならない。
ヤクザがいない日は、ラッキーです。笑って、本当にのんびりすごしました。
ですが、ヤクザがいると、もう仕方なく付き合うわけです。もうサンダルまで覚えていて、銭湯の玄関に入るとすぐそのサンダルを探す。サンダルがあると、
「あ~、いるわ」
ざんねん、という感じ。
でも、我々も鬼じゃないですから、そのヤクザにつきあってあげました。いいヤクザなんです。サウナとかに付き合うと、風呂上がりにコーヒー牛乳をおごってくれるんですよ。山之内君が「フルーツ牛乳がいい!」と言っても、「男だろ!」と言って叱られて、いつもコーヒー牛乳でした。
そのヤクザさん、本名が長谷川さんっていうんですが、長谷川さんはあまり金持ちじゃない。そして、いつも暇そうにしてました。たまに近所のスーパーとかで出会ったりすると、「おう!」とか、にこにこして手を振ってくれたりしました。スーパーでかまぼこを買うところを見たことがあります。でも、見ると、かまぼことネギとか、本当に少ししか買ってない。あんだけでいいのかな、と不安に思ったことを覚えています。
たまに学校で、山之内君とわたしとで、長谷川さんの話をすることがありました。長谷川さんに付き合うのは、イヤでしたけど、あの人もさびしい人だから、俺たちがつきあってあげるしかないよな、というような、話をしたことがあります。ませた小学生だと思いますけど、実は子どもって良く見ていて、けっこう大人の機嫌や、大人の立ち位置なんかを気にして、気を遣うようなことって、案外とあったのかもしれないな、と思います。
で、話は変わります。
ここまでが、伏線。あとで、長谷川さんが出てきますから。忘れないでね。(笑)
あの、学級経営って、いうでしょう?
学校の先生たちって、けっこう勉強家がそろっています。そりゃそうですよね、中学高校大学と、ぜんぶまじめにやってきたような人が、先生になるんでしょうから。学校がきらいな人って、先生っていう職業は選ばないだろう、と思うんですよ。だから、職員室で見回すと、たいていは本当に真面目で、コツコツと仕事をする。残業なんて普通なこと。月に百二十時間くらい残業する人もたっくさんいます。まじめなんですよ。
そのまじめな先生たちが、よく購読している雑誌が、これ、です。
「学級経営」
「統率力&授業力」
学校の先生というのは、学級という一つの人間の集団を、うまいこと経営していかなければならない。経営者なんです。
ありとあらゆる事態を想定しながら、その都度、今は何が最適解なのか、1年後を見通しながら計画し、遂行していく。
そのために、多くの本に書かれているのは、みなさんご存知の、アメとムチ、という論理。文科省の指導官も、この言葉、使っています。つまり、日本におけるデファクトスタンダードなんですね、アメとかムチ、という経営手段は。
この本には、宿題を出させるための方法が書いてあります。
~文字起こし~
今日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。
え、いきなりですが、ヤクザさんの話から始めたいと思います。(保護者の皆さん笑)
小学生の頃のことです。
わたし、当時5年生だったと思います。
ヤクザに会うのですよ。銭湯で。
うち、家に風呂があったのですけど、近所に山之内くんという子がいまして。彼の家はお風呂が壊れて、しばらくの間、銭湯に通ってた。一人で通ってたんですけど、つまらないので、友達のわたしを誘うようになりました。
私も家で風呂に入るのはつまらないし、山之内君と遊べるので、喜んでいっしょに行ってました。母親は金がかかる、とこぼしていましたが。
山之内くんがお風呂で恐れていることが一つありました。近所のヤクザに会うのですよ。背中に、でかい鯉の彫物がありました。
で、そのヤクザは、私たちを見つけると、
「よし、今日はおれがお前たちを鍛えてやる」
とか言って、サウナ室へ入れ、とか、指示するわけです。
我々はなんでか知らないけど、お付き合いしなければならない。
サウナに付き合い、その後は風呂の中に何秒沈んでいられるか、というやつ。
ヤクザはやらないんですよ。わたしと山之内くんだけにやらせるの。
たまに、近所の小学生とかが運悪く加わることがありましたが、山之内君とわたしは彼にとっても気に入られまして、よくその根性を叩き直す、という訓練をやらされました。
山之内君はそれでもその時間に風呂に入らなければならない。
ヤクザがいない日は、ラッキーです。笑って、本当にのんびりすごしました。
ですが、ヤクザがいると、もう仕方なく付き合うわけです。もうサンダルまで覚えていて、銭湯の玄関に入るとすぐそのサンダルを探す。サンダルがあると、
「あ~、いるわ」
ざんねん、という感じ。
でも、我々も鬼じゃないですから、そのヤクザにつきあってあげました。いいヤクザなんです。サウナとかに付き合うと、風呂上がりにコーヒー牛乳をおごってくれるんですよ。山之内君が「フルーツ牛乳がいい!」と言っても、「男だろ!」と言って叱られて、いつもコーヒー牛乳でした。
そのヤクザさん、本名が長谷川さんっていうんですが、長谷川さんはあまり金持ちじゃない。そして、いつも暇そうにしてました。たまに近所のスーパーとかで出会ったりすると、「おう!」とか、にこにこして手を振ってくれたりしました。スーパーでかまぼこを買うところを見たことがあります。でも、見ると、かまぼことネギとか、本当に少ししか買ってない。あんだけでいいのかな、と不安に思ったことを覚えています。
たまに学校で、山之内君とわたしとで、長谷川さんの話をすることがありました。長谷川さんに付き合うのは、イヤでしたけど、あの人もさびしい人だから、俺たちがつきあってあげるしかないよな、というような、話をしたことがあります。ませた小学生だと思いますけど、実は子どもって良く見ていて、けっこう大人の機嫌や、大人の立ち位置なんかを気にして、気を遣うようなことって、案外とあったのかもしれないな、と思います。
で、話は変わります。
ここまでが、伏線。あとで、長谷川さんが出てきますから。忘れないでね。(笑)
あの、学級経営って、いうでしょう?
学校の先生たちって、けっこう勉強家がそろっています。そりゃそうですよね、中学高校大学と、ぜんぶまじめにやってきたような人が、先生になるんでしょうから。学校がきらいな人って、先生っていう職業は選ばないだろう、と思うんですよ。だから、職員室で見回すと、たいていは本当に真面目で、コツコツと仕事をする。残業なんて普通なこと。月に百二十時間くらい残業する人もたっくさんいます。まじめなんですよ。
そのまじめな先生たちが、よく購読している雑誌が、これ、です。
「学級経営」
「統率力&授業力」
学校の先生というのは、学級という一つの人間の集団を、うまいこと経営していかなければならない。経営者なんです。
ありとあらゆる事態を想定しながら、その都度、今は何が最適解なのか、1年後を見通しながら計画し、遂行していく。
そのために、多くの本に書かれているのは、みなさんご存知の、アメとムチ、という論理。文科省の指導官も、この言葉、使っています。つまり、日本におけるデファクトスタンダードなんですね、アメとかムチ、という経営手段は。
この本には、宿題を出させるための方法が書いてあります。