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職員室で、声をかけられた。

まだ学級開きの初日、である。

入学式や始業式があり、子どもたちとろくに話もしていない。

顔もまだひとりひとり、見たのか見ないのか、という感じ。

お互いにドキドキしている。


ある先生が、

「新間先生!先生のクラス、全員立たせてましたけど、なにやってたんですか」

と聞いてこられた。

ふだんから気の置けない、おもしろい同僚の先生である。

わたしがやっていることに、少し興味があるようだ。
ときおり、廊下を歩きながら、私のクラスの様子が見えると、なにやってるんだろう、と思うらしい。

「え?立たせてたですか?」

わたしが急に思い出せずにいると、

「はい。子どもたちが、ほぼ全員、起立です。お説教ですか?」

ちょっとしたギャグなのか、からかうような調子で。

「びっくりしましたよ。初日からお説教かな、と」



そうなんです。

お説教じゃあ、ないんですが、立たせてましたネ。

うちの教室、しょっちゅう、子どもが立ったり座ったりするの。

じゃないと、面白くないから。

体を動かしたくなって仕方のない子がいるでしょう?

そういう子たちって、立ちあがったり座ったりするのが、好きみたいです。

授業中、教師公認のもと、体を動かせるのだからネ。



「全員立ちます!九九の七の段、言えたら座りなさい」

のような指示、よく出します。

また、地図帳を開いてたら、

「宮城県。ゆびで指せたら、立ちなさい」

とか。


全員立ったら、

「おとなりさんと同じだったら、座りなさい」

といって、座らせます。


3,4年生くらいだと、こういう活動が本当に好き。

一つの指示を出して、できたら、こうする。終わったら、こうする。

体育でも、そう。

「10回ジャンプできたら、走って壁をタッチしなさい。タッチできたら、もどってきて、着た順に座りなさい」

これ、子どもが燃える理由があります。

ちょっとした、ゲームみたいだからじゃないかな、と思っています。



ちなみに、初日に立ったのは、

「新しいぞうきんを持ってきた人は、立ちなさい」

でした。

初日だから、まだ持ってきていない子もいる。

立つことで、持ってきたぞうきんの、全体の「量」を把握できる。
立った人数が分かるから、すぐに前で集めるか、休み時間の前に箱に入れるかなど、教師が瞬時に計画できる。
立つことで、その子たちには「初日に忘れずに持ってこれた」という感じがもてる。(褒められたような感じ)
新間先生は、授業時間に立つのがふつうなんだな(べつに叱られるのでもなく、ふつうに立ったり座ったりするんだな)、と分かってもらうことができる。

「初日からお説教ですか?」
とは、わたしをからかって言ったのだと思いますが、
立たせたのは事実ですから。


いや~、M先生、よく見てるねえ!!


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