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「先生、アンパンマンの世界は、お金要らないんだよ」

お金、要らない?? えーーーっ!!
と、びっくりぎょうてん。

ジャムおじさんやバタ子さん、保育園の先生たちも、お金をいっさい使わない暮らしをしているとのこと。

なんでそんなことが分かるかと言うと、どうやらそういう説明が、アンパンマンミュージアム(全国6か所)にあるらしい。かつて、そこへ行ったことのある子が、力をこめて、断言している。
教卓の周りで行われる、休み時間のたわいないおしゃべりから、それが判明したのだが、本当か・・・?



金の要らない村、腹が減ったら、ください、といえば貰える村。
アンパンマンは、ジャムおじさんに給与もらっているわけではない。
バタ子さんも、カレーパンマンも、食パンマンも・・・。
そこに住んでいる人たちも、みんな、お金のいらない暮らしをしている。


そんな、バカな・・・。


まさか、と思ったら、本当にそうだった。↓


☆アンパンマンワールドにはお金はありますか?
http://anpanman.jp/sekai/qanda/049.html

*作者の回答
アンパンマンワールドでは、自分で作ったものをあげて、みんなに喜んでもらうことだけでうれしいので、お金はまったく必要ないんですよ。




ところで私は、高校を卒業すると同時に家を出て、学生時代はできるだけ「金のかからない暮らし」をしようと考えていた。
もちろんバイトもしたけれど、それよりも何よりも、ひがなのんびりと縁側で日向ぼっこをして暮らしていくのが人生の理想だと考えていたため、家賃が720円、という破格の部屋に住むことにした。

電気ガス水道が3千円で、すべて入れると 3720円。

今考えても、この価格は、スバラシイと思う。
それだけ支払えば、雨露がしのげて、風呂トイレが使え、部屋の電灯までつく、という暮らし。
今から四半世紀前には、そういう『学生寮』が存在していた。

超貧乏な暮らしをしていたが、何より筆記すべきは、寮の夜食の価格破壊ぶりであろう。
なんと、どんぶりに、山盛りのごはんが、1杯、10円であった。おかずが、30円。
缶コーヒーが100円だった時代で、多少、あれから物価は変化しているかもしれないが、それでも安すぎる。

わたしは、夜食を入手するために、毎晩10時に寮の食堂に出かける。
当時、わたしよりもさらに貧乏で、「赤貧男」と呼ばれていたYという同い年の男がいた。
その男が必ず私よりも先に来ていて、食堂入口の、褪せた黄色い壁際に立って待っている。
わたしを見つけると、

ニィッ、と歯をむき出して笑い、

「今日は、サンマやでぇ」

と、関西弁で教えてくれるのであった。

彼は、吉野屋で牛丼を食べるときは卵をつけた方がコスパが良い、というのが持論で、何度もその理由を、わたしに説明してくれた。(今となっては、それがなぜだか分からない。たぶん、この上ないほどのゴージャス感を、たった30円でも、存分に味わえるチャンスだから、というようなことだったと思う)

ともかく、彼の口癖は、

「金は使うと癖になる。できるだけ使わないのがイイ」

であり、

「邱 永漢(きゅう えいかん)が、こう言っているが・・・」

であった。
彼は、経営コンサルタントの邱さんを崇拝してやまなかった。


また、これが一番金銭感覚を鍛える、と言いながら、透明な空き瓶に、小銭をたらふく集めていたのを知って、なんでそうしているのかを問うたところ、

「金は、音が大事なんや。紙幣は音がせえへんけど、硬貨は音が鳴るやろ。その音を、自分の骨の髄(ずい)に聞かせちゃるわけや」

という感じのことを言っていたが、まさに、貧乏神、というか、赤貧の怨念がとりついたような男で、寮でも一目おかれる存在。

彼が、するめをくちゃくちゃ噛みながら、

「なんかもっと、食うもん、ないか~」

と、寮の長い廊下を歩いているときは、金の亡者が歩いているようで、近寄られると、なにかこちらのエネルギーが吸い取られるような気がしたものだ。


ところで、Yは、寮のお祭りだか何かで、赤いマントを羽織り、アンパンマンの役になって舞台に立ったことがある。

それを、今、急に、思い出した。

アンパンマン・ワールドは、お金のいらない世界。

この事実を、Yは、知っていただろうか。


あんぱん