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「哲学を教科に!」を合言葉に、全国の小学校教師らが、授業科目に「哲学」を加えることをめざして活動を続けている。
全国の小学校教師らがつくる<哲学教育と小学校教師の会>は26日、琵琶湖のほとりにあるカフェレストランにて全国集会を開き、「正しいことはだれが決めるのか」と題する講演やワークショップを行った。参加者は全国の小学校教師の外、PTA、小学生や大学生、地元の漁師も参加した。
活動の目玉となる「哲学マラソン」では、

「幸福は何処にあるか」

という命題を連続42.195時間かけて議論しあった。

「哲学マラソン」は毎年リタイアする者が続出するハードな会合として知られている。会場となったレストランの周りには通常の給水ポイントに加え、頭を抱えて七転八倒する参加者や、突然叫びだす衝動を抑えようと走り出す参加者の安全を確保するため、巨大なエバーマットに加え、「ぷちぷち」として知られる気泡緩衝材を張り巡らせた。

哲学マラソンに参加した最高年齢の女性(88)は、
「幸福の正体はつかめないままだが、とりあえず寝られる」
と、マラソンを完走した喜びを噛みしめていた。

また、哲学マラソンに裸足で参加し、議論の最中もずっと裸足で走り続けた東京都調布市の男性(44)は、
「幸福は裸足にある、というのが私の結論です」
と晴れやかに語った。

他にも様々な催しが行われたが、ひときわ会場で人気を博したのは、「自分の価値観を明確にする」スキルトレーニングの講座と、「思い込みを取り去る」ワークショップ。

「自分の価値観を明確にする」スキルトレーニングの会場では、

○難しいことは言うな
○人の話をさえぎるな
○人を全否定するな


とルールを定めたうえで、

「正しいことは誰が決めるのか」

という命題について、デカルトの「方法的懐疑」を駆使し、難解な意見を戦わせた。
司会者の
「発言は平易な言葉でわかりやすく、一人ずつ順番に!相手を否定しないで!!」
という呼びかけもむなしく、びわこアリーナのメインスタジアムに集まった3000人の参加者は、スタートのピストル合図と同時に一斉に発言を開始、論理的に単純ではなく、容易に理解しがたい意見が錯綜する中、喧々囂々とやりあった。
拡声マイクを持参したびわこ周辺に住む男性(40)が、
「まったく、人の話を聞かないやつばかりで、ここに集ったのは人間のくずばかりだ!」
と吐き捨てるように感想を述べたほか、
京都から参加した若い歌手(19)は、
「正しさに 包まれたなら〜 目に映る すべてのことは ♪ メッセージ」
と何度も繰り返し、トレーニングの成果を表明していた。

思い込みを取り去るワークショップでは、「要らない情報をそぎ落とす108の方法」の著書で知られる新間草海さん(小学校教師)が講師となり、会場となった納豆工房の座敷に老若男女250人が詰めかけ、車座の中心に据えた納豆の<粒>を題材に、「これは何なのか」をとことん疑うワークを実施。
どうみても納豆だ、という小学生に対し、精巧な作り物とも考えられると、<疑い>を取り除こうとしない大学生、それに加えて、これはビー玉だというアメリカ人、グリーン豆だというフランス人、「とにかく早く食わせろ」という小学生の祖父などがお互いの考えを譲らず、白熱した議論を展開した。

参加した小学生は、
「みんな言うことが違ったけど、ちっとも、むずかしくはなかった。教室でもこんな楽しい哲学ができたらいいな」
と感想を語るとともに、納豆をほおばる祖父に連れられ、日没の解散時まで家族で哲学を楽しんでいた。

全国集会は、明日29日、会場を北海道旭川動物園にうつして続行。参加者は、会場のオランウータンとともに「人間の本質とは何か」とテーマを絞り、哲学思考を深めていく予定。

哲学を教科に!






(この記事は、フィクションです)