あるところに、黄色い小さな家がありました。
そこにひとりの若い男が住んでいました。
ある朝、男が起きてのびをしていると、
飼っている ねこも つられてのびをしました。
のびをしているねこをみながら、男が口笛を吹いて、
朝のお茶を飲んでいますと、
窓の外がなにやらぴかっと光りました。
どっすんころころ、どっすんこ!!
思わず腰がぬけそうになりました。
家の前をみると、大きないん石が落ちていました。
まだところどころが赤くなっていたり、黒くなっていたり、
こげくさいようで、しゅー、という音もしていました。
困ったぞ、あんなものが家の前に・・・
男は腕組みをしながら、ねこをみました。
ねこも、困ったような顔で、男をみました。
そのうちに、どこかへ行ってしまうのだといいがな。
どこかへころがっていくような様子はないかな?
男はまどのそとをこわごわのぞきました。
石はうごきません。
男はけいさつに電話をかけましたが、石をうごかすのはけいさつの仕事ではないと断られました。
次に、しょうぼうしょに電話をかけましたが、石をうごかすのはしょうぼうしょの仕事ではないと断られました。
男は腹を立てました。
そして、けいさつとしょうぼうしょの悪口を言いました。
でも、石はちっともうごかないようです。
つぎに、男は表に出ていって、石を何度か靴の裏で蹴りました。
何度か蹴っていると、だんだんにくらしくなってきました。
コンニャロ!
こら!
こんなところに落ちてくるな!
そうやって言いながら、男はたくさん汗をかきました。
石が熱かったので、靴の裏がこげました。
それでも、石はまだ動きません。
男は腹を立てて、ねこをみました。
ねこも、毛を逆立てて、男をみました。
男はつかれて、腰をおろしました。
靴が熱くなっていたので、はいていたくつを脱いでしまいました。
草の上に座って、石をみていると、男はだんだんと
かなしくなってきました。
それにしたって、すこしは動いてくれてもいいでしょうにね。
男は、だまって、いく粒かの涙をこぼしました。
ねこも、目をふせて、しっぽをゆらせてすわりこみました。
男は、石に目をやって、
「おれは、こんなに悲しんでるんだぞ」
とポツリと言いました。
はなをすすりながら、そう言ったのです。
それでも、石は動かないまま、じっとしていました。
男はてこの原理で石を動かせないかなと、長い棒でも
やってみましたが、やはりだめでした。石はびくとも
動かないのでした。
そのうちに、男はだんだんくたびれてきました。
家の前にあるいん石を眺めているうちに、
こう思うようになりました。
「家の真ん前にあるからといって、邪魔だということもあるまい。
この大きな石をよけて、道をつくればいいのだ」
そう考えると、すこし男の顔に、笑みがもどってきました。
ねこも、しっぽをふって、満足そうにミョオウ、となきました。
これはごきげんなときの声なのです。
しばらくしてから、
ふと思いついて、いん石に水をかけてみました。
熱を冷ますためです。
いん石は、ジューと白い湯気をたくさん出しました。
湯気がたくさん出てくるので、
まだまだいん石は熱いのだな、とわかりました。
それから、何杯も何杯も、バケツで水をやりました。
湯気があたりをつつみました。
すると、その様子をみていた通り掛かりの人が、
これはいん石ですか?と声をかけてきました。
そのとおりです、と男が答えると、
めずらしいな、博物館には届けないのですか?と聞かれました。
「私が博物館へ送ることもできますよ。だって私は、博物館につとめているんですからね。」
もうこのときこそは、男は冷静になっていました。
すばやくお願いをすると、手際よくトラックがやってきて、いん石は運ばれていきました。
いん石が見えなくなってしまうと、
ねこはしっぽを曲げて、鳴きました。
男は、ねこを抱き上げると、肩車をして家に入りました。
そして、ひとりごとを言いました。
「いやあ、おまえ、けっこう重くなったなあ!」
ねこは、それを聞いて、
みゃおみゃお
と言いました。
そこにひとりの若い男が住んでいました。
ある朝、男が起きてのびをしていると、
飼っている ねこも つられてのびをしました。
のびをしているねこをみながら、男が口笛を吹いて、
朝のお茶を飲んでいますと、
窓の外がなにやらぴかっと光りました。
どっすんころころ、どっすんこ!!
思わず腰がぬけそうになりました。
家の前をみると、大きないん石が落ちていました。
まだところどころが赤くなっていたり、黒くなっていたり、
こげくさいようで、しゅー、という音もしていました。
困ったぞ、あんなものが家の前に・・・
男は腕組みをしながら、ねこをみました。
ねこも、困ったような顔で、男をみました。
そのうちに、どこかへ行ってしまうのだといいがな。
どこかへころがっていくような様子はないかな?
男はまどのそとをこわごわのぞきました。
石はうごきません。
男はけいさつに電話をかけましたが、石をうごかすのはけいさつの仕事ではないと断られました。
次に、しょうぼうしょに電話をかけましたが、石をうごかすのはしょうぼうしょの仕事ではないと断られました。
男は腹を立てました。
そして、けいさつとしょうぼうしょの悪口を言いました。
でも、石はちっともうごかないようです。
つぎに、男は表に出ていって、石を何度か靴の裏で蹴りました。
何度か蹴っていると、だんだんにくらしくなってきました。
コンニャロ!
こら!
こんなところに落ちてくるな!
そうやって言いながら、男はたくさん汗をかきました。
石が熱かったので、靴の裏がこげました。
それでも、石はまだ動きません。
男は腹を立てて、ねこをみました。
ねこも、毛を逆立てて、男をみました。
男はつかれて、腰をおろしました。
靴が熱くなっていたので、はいていたくつを脱いでしまいました。
草の上に座って、石をみていると、男はだんだんと
かなしくなってきました。
それにしたって、すこしは動いてくれてもいいでしょうにね。
男は、だまって、いく粒かの涙をこぼしました。
ねこも、目をふせて、しっぽをゆらせてすわりこみました。
男は、石に目をやって、
「おれは、こんなに悲しんでるんだぞ」
とポツリと言いました。
はなをすすりながら、そう言ったのです。
それでも、石は動かないまま、じっとしていました。
男はてこの原理で石を動かせないかなと、長い棒でも
やってみましたが、やはりだめでした。石はびくとも
動かないのでした。
そのうちに、男はだんだんくたびれてきました。
家の前にあるいん石を眺めているうちに、
こう思うようになりました。
「家の真ん前にあるからといって、邪魔だということもあるまい。
この大きな石をよけて、道をつくればいいのだ」
そう考えると、すこし男の顔に、笑みがもどってきました。
ねこも、しっぽをふって、満足そうにミョオウ、となきました。
これはごきげんなときの声なのです。
しばらくしてから、
ふと思いついて、いん石に水をかけてみました。
熱を冷ますためです。
いん石は、ジューと白い湯気をたくさん出しました。
湯気がたくさん出てくるので、
まだまだいん石は熱いのだな、とわかりました。
それから、何杯も何杯も、バケツで水をやりました。
湯気があたりをつつみました。
すると、その様子をみていた通り掛かりの人が、
これはいん石ですか?と声をかけてきました。
そのとおりです、と男が答えると、
めずらしいな、博物館には届けないのですか?と聞かれました。
「私が博物館へ送ることもできますよ。だって私は、博物館につとめているんですからね。」
もうこのときこそは、男は冷静になっていました。
すばやくお願いをすると、手際よくトラックがやってきて、いん石は運ばれていきました。
いん石が見えなくなってしまうと、
ねこはしっぽを曲げて、鳴きました。
男は、ねこを抱き上げると、肩車をして家に入りました。
そして、ひとりごとを言いました。
「いやあ、おまえ、けっこう重くなったなあ!」
ねこは、それを聞いて、
みゃおみゃお
と言いました。