「まだ、しゃべっている人が、2人います!」
こういうセリフ、教師なら何度も口にしたことがあるだろう。
集会のときなどに、静かにならない場合に、よく言う。
しかし、今回、これが危険だということがわかりました。
ぶちきれたのは、アスペルガーの診断がある、Tくん。
「おれ、しゃべってねえし!!!」
集会の際に、中央に立って、進行していたG先生。
「まだ、しゃべっている人が、2人います!」
の際に、頭をふらふらと動かしていたTくんを、ちらりと見てしまった。これがつまづきの第一歩。
Tくんが、
「見られた」
と感じたのは、確実だ。
そのときに、冒頭のセリフがかぶさって聞こえたのだ。
完全に、Tくん、彼の頭の中には、
G先生が、おれのことを叱った!
と合致して脳内処理されてしまったのだろう。
おれ、だまっとったし!!!!
このセリフをおさえきれないのが、Tくんです。
だんだん声が大きくなって、集会はおもわぬ展開を見せ始めました。
あとで、このときのことをふりかえって、G先生が、
「馬鹿のひとつ覚えみたいに、いつも使ってたのがダメだったのかな」
とおっしゃっていたのですが、ちがうでしょう。
馬鹿のひとつ覚え、は、秀才の常とう手段です。
本当の馬鹿は、覚えきれない数のことを覚えようとして自滅するのですから。秀才は、応用の効く基本ルールを最低数だけ覚えて、うまく活用していくのです。G先生のやり方は、覚えるべき内容が、まだ本当に応用のきくレベルに達していなかったのです。
「まだ、しゃべっている人が・・・・」
これでは、客観的に正しいことを言っているとは限りません。
また、アスペルガーの子にとっては、自分はだまっていたのに、叱られた、と言うような、今回のような事件が起こりえます。
なので、これは、セリフをこう改善すべき。
「まだ、不合格が、2人、います」
これならば、Tくんは、おれは合格なんだ、と思って静かにしてくれているはずです。
合格不合格の基準は教師側にあるのが明白ですから、そのことについては突っ込まれる気配はなくなります。
そういうことをG先生と話をしていたら、横から、M先生が、
「そんなことないな!まだ甘い!」
と突っ込んでくれました。
仮に、
「不合格が3人います」
とか言ったとする。
すると、
「なんで不合格をお前が決めるんや!」
とぶちきれる子がいる、というのです。
これには、M先生も、ぽかーん。
これは、瞬間的に斬らねばならないこと。
それを、一瞬でも、ぽかーんとして、隙をみせてはいけない。
「それを決めるのが先生の仕事です!」
でも、なんでもいい。
すぐに、間髪をいれず、すぐさま、直に、返さなければいけない。
そうしないと、こういう勘違いをする子は、
自分の意見が認められた
という、第二ステージの勘違いに、勝手に進行していくのです。
ぽかーん、と隙を見せてしまったM先生。
どうなったかというと、
たてつづけに、
「なんで、いつもお前が合格不合格をきめとんや」
「勝手に決めんなや」
「なんでお前の言うことをきかないかんのや」
と、どんどんとミサイルを撃ち込まれて、たじたじとなりかけたそうです。
M先生、なんといったか。
「教育をつかさどるのが教師です!先生はこれがお仕事です!先生は家族をこの仕事でやしなっている!きみたちの合格不合格を決めることで、お給料をもらっている!きみのお父さんと同じだ!」
と、懸命に叫んだそうで・・・。
叫んじゃないけないとは思いますが、たじたじとなった状況はこれで回避できたそうです。
このあたりのセリフは、さすがはベテランの味。
ともかくも回避できた、という点で、M先生は合格ラインでしょう。
わたしだったら、なんと言ったかなあ。
わからないが、合格できなかったかも知れない・・・。
まことに、修業は大事です。
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