授業参観があった。
日頃、立ち歩いている子も、始まってなかなか席につかない子も、道具をよく忘れる子も、不思議とよい子になる。
シンとした空気の中で、鉛筆のコリコリという音だけが響いている。
漢字スキルの練習中だ。
思わず、心の中で、笑ってしまう。
(こんなに、静か・・・)
それが、声に出る。
「よいです。いい姿勢の人がいっぱいです。左手の置き方もいい!」
力強くほめたつもりだが、声の後半がうらがえっている。
ん?
と怪訝そうに、こちらの顔をチラッと顔をあげて見る、いつものおしゃま娘。
でも、すぐに視線を落として、漢字の書き取りを進めている。
さすがだ。
こういうとき、じっと黙っていられなくなる。
だって、目の前の子が、しずかなのだ!
こんなことは、めったにない!
ほめるしかない!
でも、
どうやって?>??
静かなことをほめた。
姿勢をほめた。
左手の置く位置をほめた。
集中力をほめた。
字がていねいなのをほめた。
目をつぶってやり直している人をほめた。
さあて!
残り、2分だ!
なにか、ほめなきゃ!!!
「先生、しずかにして」
窓際のやんちゃくんが、低い、しずかーな声で、ぼそっと言った。
どっ、と保護者から笑いが起きる。
ま、いいか。
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