2学期の給食、最終日を迎えた。
最終日のお楽しみは、「セレクト給食」である。


セレクト、とは、選ぶ、ということ。
2週間ほど前に、児童から希望をとった。
A: てりやきハンバーグ
B: てきやきチキン

このどちらかを、選択できるのだ。

さらに、飲み物。
A:りんごジュース
B:コーヒー牛乳
好きな方を、どちらでも選ぶことができるので、子どもも興奮状態であった。

「先生!おれ、てりやき希望だったのに!」

という、意見の食い違いをふせぐために、黒板には拡大した希望用紙の集計表がある。


給食当番が、
「○○さん、○○さん、・・・」
と、つづけて呼ぶ。
先にハンバーグを配るので、ハンバーグ希望者の名前を片端から呼んでいるのだ。


みんなの、真剣な表情と、いざ食べはじめたときのうれしそうな表情。
いいなあ、セレクト給食!
もりあがるもの。



それはそうと、これは昨日のこと。
今日は、給食がなかった。短縮授業で、子どもは昼過ぎにすぐ帰宅、である。

すると、帰宅前に、
「先生、いっしょにお昼たべよう」
と、子どもから声がかかった。

「ねえ先生、職員室で食べるの」 Sが訊く。
つづいて、仲良しのY さんが、
「昼はお弁当?」
ちゃんと答えるんだよ、というような表情。
「先生、奥さんがつくってくれたの?」

いろいろと、質問があいつぐなか、Sさんたち数人が、先生といっしょにお昼を食べるのだ、とやる気まんまん、である。

すぐに弁当つくってくるから。

そう言って、本当に弁当をもってきた。


しょうがないなあ、と言いつつ、会議室に子どもらを連れていく。
そこで、なにをするでもなく、ただ
「じゃあ、いただきます、だ。食べよう」
と、お互いにもってきた弁当をひろげて食べ始めた。

私も、買った弁当であったが、いっしょに食べ始めたのだが、そのときの子どもたちの会話が、なんとも初めて聞くようなニュアンスで、新鮮だった。

学校で、ざわつく教室で、しゃべっている様子と、ちがうのである。

この子は、こんなに静かにしゃべる子だったのか。
静かだけれど、昨日見たテレビの話を、あきることなく、話している。
たまに、おもしろくてお互いに笑いあう。
その感じも、いつもは感じたことのない、なんだかかわいらしい、幼いような表情で見えるのだ。

学校、という鎧をぬいで、しょっている看板をはずし、互いに向き合った。
一人の37歳の男と、10歳の男たち。

「レッドカーペットがいちばんおもろいよ」
「ぷっすまだよ」
「はねとびは、興味、なくなった」
「ほんと?」
「おれは見てる」

こんなたわいない会話が続いた。

なんだか、これまで感じたことのない、新しい感覚。
うまく説明できない。

ただ、お互いに、用もなく、共に、いる、という感じか。


ともかくも、どこからともなく楽しく、心がうきうきする時間だった。
なんだったのだろう。