初任者の仲間とひさしぶりに会った。
2学期もおしせまった、という時期にもかかわらず、他校で初任者の研究発表があったのだ。
「忙しい時期になってしまったねえ」
と言いながら、指導主事の先生も来られて、
「しっかり準備させてもらったから、この時期ならではの授業するからね」
と、発表者の代弁をしていらした。
発表者になっている、同じ初任仲間の先生。
われわれの控え室に挨拶にこられて、いやあ、と頭をかいている。
「がんばってください」
「緊張しますよ」
しかし緊張している様子でありながらも、その後、やはり子どもたちと一緒になって掃除をしている姿には自信もうかがえる。
堂々と、子どもたちに指示し、テキパキと自身も清掃に取り組んでおられる。
日頃の姿なんだろうな、と感心してみていた。
同じ初任仲間が、こうして授業をする機会がある。
それを見させてもらえる。とても新鮮な気持ちだ。
教室の掲示を、他の仲間と共に見ている。
工夫がある。
なるほど、と思うこと。メモをする。
すると、指導主事が来て、
「感心、感心。同じ仲間から学ぶことって、多いよね」
と声をかけてくださる。
こうして声をかけてくださる姿勢こそ、われわれが学ぶことなのだろうと感じる。
さて、このときの授業はとても学ぶことが多かったのだが、話はこれで終わらない。
この授業後の話し合いのあと、雑談風になったときのこと。
「先日、ついに、と思うことがありました」
と、ニヤニヤしながら、初任の仲間が話し始めた。
なにが、『ついに』なのか、と思って聞いていたのだが、これがすごい。
個人懇談の週。
学校に、かわるがわる、時間約束をしていた父母が面談に訪れる。
教室の前に用意された机とイスに腰をかける保護者。
教室には教師がいくつかの資料を用意し、個別の保護者と20分きざみのスケジュールで、懇談をしていく。
すると、ある保護者との面談の途中で、廊下の方から、オヤ?と首をひねるような音。
キャン!
なんの音だ?
と思っていると、
つづいて、
「シッ!しずかに!」
と声がした。
ますます、なんだろう、と思っていると、さらに大きなボリュームで、
「キャンキャン!!キャン!キャウーン!!」
と音が!!!
なんだ、なんだ?と、面談中の親と顔を見合せて首をひねっていると、
教室うしろの扉がガラッと開き、
「すみませ~ん。ちょっとうるさくしちゃったんで、パスして帰りま~す」
と、若い母親が顔を出した、という。
その後ろに、首輪につながれた、一匹の茶色いチワワ。
散歩の途中で、個人懇談に立ち寄った、ということであった。
それを聞いて、指導主事も笑い転げ、
「ついに、ねえー!」
「ははあ、ついに、ねえ」
「犬まで来たか」
「落ちたもんだねえ、懇談会も」
「散歩の途中かあ」
教師としては、
ここまでなめられたか、
という思いなのだろう。
それが
「ついに」
という言葉になって、みんなのため息をさそったのだろう、と思われた。
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