前項からのつづき。
子どもが、自らをふりかえる。
さて、そんなことができるのだろうか。
学級の子どもたちを想像して、考えてみる。
彼らは、自分のことを、自分の思いやイメージでとらえている。
だから、底が浅い。
将来、漫画家になるんだといって、せっせと漫画を書いている子が、
ぼくって漫画大好き。
と言う。
そうじゃあない。
自らをふりかえる、というとき、
「ああ、ぼくって漫画大好き」
というレベルのことを言うのではないのだ。
決してそれが悪い、というのではない。
むしろ、このあたりが入り口なのだろう。
みんな、この入り口から、スタートだ。
漫画が好き、と思ってみるから、そう見えるだけのこと。
むしろ、筆が進まないなあ、と感じるときも、自分のことをみてほしいし、描くのがおもしろい、と思えるときと、そうでないときと、ずいぶん波があるんだなあ、ということも見てほしい、感じて欲しい。
キメツケで、固定的にみるだけでは、いけない。
なにか、大事なことを落とすような気がしてならない。
いつも、つねに、自分をふりかえられる力。
例えば、ぼくは○○は苦手だ、○○が得意だ、○○がやりたい、と思っている。
そう思って、そう言ったとしても、そう思っているから、そう言ってたから、「実際にそうだ」とは限らない。
思う、言う、とかでなく、その人の「実際」はどうだろうか、ということ。
「いや、本当です。本当に、心底、そう思っているんデス」
と言うかもしれない。
それが、「ウソ」だとか、「本心」だとかという問題でもないのだ。
心底そう思っているとしても、「その人の実際はどうだろうか」というもの。
夢は漫画家だと思っていたら、案外そうでないかもしれない。
・・・と考え続けていて、いや、やっぱり漫画家だぁ、と再発見するかもしれない。
そのうちに、もっとちがう力量を見つけるかもしれない。
驚くほど、好みが変わるかもしれない。
変わるものを発見し続けていると、今度は、変わらないものを発見するかもしれない。
好みはどんどん変わるが、これだけは変わらないなあ、と思うものがあるかもしれない。
実際をしらべるためには、つねに、ふりかえり続けることしかない。
つぎの瞬間には、自分の内面が変わっていることだってある。
「男子三日会わざれば刮目して見よ」
大事なのは、つねに、ということだろう。
つねに、常時。
ふりかえっていく。
自分を観察していく。そうして、自分に迫り続ける。自分を、知ろう、とする。
それをさぼると、またたくまに、自分についての情報が古くなってしまうのだろう。
自分で自分の古いイメージを持ったまま、新しい日々をすごしているのだとしたら、もったいない。自分の方向性とか、内在する可能性などというものは、こうした日々の「ふりかえり」の営みの連続でしか、見えてこないように思う。
では、ふりかえるには、どうするか。
感情や印象を入れないで、草花の観察のように、自分を観察するのだと思う。そうして、過去から現在に至る、現状ありのままの自分を、素直に見て、知る。
「先生、ぼくって、こんな(・・・中略・・・)・・・人なのかなあ。ずっと自分を見てきて、今こう思うんよ。」
卒業前、こんなふうに切り出す子ばかりだったら、進路相談も簡単だろうなあ。
だって、自分をちゃんと、知っている子ばかりだもの。
勘違いしている子や、なにも自分のことを知ろうとしてこなかった子ばかりだから、進路相談がむずかしいのだ。
自分のことを知らないから、失敗がこわい。
料理の道に進む、と言っておきながら、
「飽きたらどうしよう」
と言う。
自分を知らないから、決められないのだ。
「うまくいかなかったら、どうしよう」
事柄の達成しか眼中にないから、苦労する。
進路相談にかぎらずとも、自分自身をふりかえる癖のある子は、強い。
いろんな場面で、強さを発揮できる。
自分が、いろんな状態になることを知っているから。むしろ、大事なのは、いろんな状態や気分になる、その表面的なことよりも、自分の本当のねがいの方だ、そちらが大事だ、とわかっている。気付いている。
自分の本心、本当のねがいが大事だ、と考えることができるようになっていること。ここまでいけた子は、自立して、自分で自分の人生を、つくっていくことができるだろう。自分の内面、自分の本音は?自分の本当のねがいは?と、つねに内面・中身に立ち戻って、考えていける。
さて、では、どんな力を、子どもにつけていくのか。
ふりかえってみる力。
それはそうだ。
それを、どうやって?
先に、「感情や印象を入れないで、草花の観察のように、自分を観察する」、と書いた。
草花の観察。
そうか。
それを、やれる力が、まず必要だ。
素で、みる。
みる、ということが、できるか。
今の子どもたちが、学級の子どもたちが、そもそも、「見る」 の力を、持っているかどうか。
やっぱり、理科教育。
草花の観察。この力。
みる、力。
みる力。必ず、理科の力にとどまらない。自分を知る、自分の人生を知る力に、通じていく。
また、そこを描いての、理科教育であり、草花観察。そのレベルにしていく。教師がしていく。
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