誰にも言わないで、先生にも聞かないで、保健室の絆創膏テープを、もってきてしまった子がいる。
自分が指を怪我していて、ガーゼを巻いたり、とったりしている。
そのために、ガーゼをまきつけるのに使う、テープが必要だと思ったらしい。
もちろん養護の先生がいれば、ことわっただろう。
しかし、あいにく、掃除の時間が終わったばっかりで、ちょうど、ほんの少しだけ、席をはずしていたらしい。鍵は、開いていた。
そこで、目に付くところにふと置いてあった、絆創膏が目に入る。
「これ、これ」
持ってきてしまった。
当然、叱る。
誰にも言わないで、というところを叱る。
「必ず、先生にことわってからです。勝手なことをしません。物をもってくるなど、もってのほかです。」
こういう具合に、叱ったのが、4月。
何よりも、ルールを徹底させる月だと思っていたから、こういうことも、きっちりと叱った。
「なぜ聞かないでやったのか。もう二度と、同じようなことをしないでください。勝手な行動をしません。どんなことでも自分で判断しないで、それをしてよいかどうか、事前に先生に、聞きなさい。」
それ以後、その子は、自分で判断しないで、なんでも聞いてくるような子になった。
そうなってから・・・
6月ごろから、今度はそれが、鼻につくようになった。
「それくらいのことは、人にいちいち聞かないで、自分で考えて判断して欲しい」
と言ったところ、
「どっちにしたらいいのか、はっきりしてほしい」
というようなことを、つぶやかれた。
4月は何でも人に聞けといい、6月には、自分で判断しろ、と言う。
教師は勝手だ、と。
時と場合によって、聞いてくるように言ったり、聞いてくるなと言ったりするのは、教師の側に、自分に気に入らないことがあっただけで、ずいぶん自分勝手だったなと思う。
形のないものに、本当の価値がある、と考え、そのことを大事にしているはずなのに・・・。
一人ひとり、学級の子どもたちが、もっと自分の頭で考え、行動できるようにしていきたい。
自分の考えでやらない、ということと、自分で考えない、というのは、まったくちがうことなのだ。
「みんなの考えでやっていきたい」
という心からの気持ちになりあわないかぎり、いつになっても、こうしたことは堂々巡りである。
「なんでこんなことするの!」
「この前、これが大事だと言ったばかりでしょ!」
「また、こんなことをして!」
こういうセリフはことごとく、子どもの意思に、ふみこんでいる。
子どもの心に、余計な操作をしようとしている。
子どもをしばることのない、しばりようのない、対応をしていきたい。
そのためには、教師としての力量を、あげていくしかない。
こちらの心、気持ちを鍛えていくのに、あと何年かかるか。
気が遠くなるが、さて・・・。
自分にひきつけて考えてみる。
ともかくも、今、できることを、「すべて」やっていく、ということなのだろう。
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