こだわりの強い自閉症児。
トイレの水を、何度も流す。
時には、1時間もトイレにいる。
そして、水を流し続ける。
何度も、何度も、やりつづけてやめようとしない。


母親は困った。
やめなさい、と怒鳴る日々が続いたそうである。
子どもがトイレに入ると神経が苛立つ。
トイレに入る前に、すぐに出なさい、とクギをさすが、きかないわが子。
そのうち、トイレのドアを開けて、監視するようになる。

しかし、なおも流し続けようとするわが子に対して、力ずくで対処するしかない、とがんばる。トイレに居続けようとする子の腕を引きずって、トイレから出そうと努力を続ける。
泣き叫ぶ子。
パニックになる子をみて、母親も疲れ果てる。


神経科に相談すると、とんでもないことを言われた。

「やらせておきなさい。心ゆくまでやらせるんですよ。心が満ち足りないから、補償行動をするんです。いろんなことで満足がいくようになれば、自然と辞めますよ。それまで待つ勇気が必要です。」

母親は迷って、やらせるべきか、やらせないべきか、悩んだ。


さて、どうしたらよいか。

相手は自閉症児である。
自閉症児は、決まった行動を続けることが好きだ。それで安定する。
だから、トイレの水を流す行為を、続ければ続けるほど、続けることでの安定を求める。
すなわち、やればやるほど、やりたくなる。飽きる、ということはない。

佐々木正美先生は、
「お金をとって相談した相手が、こんな回答しかしないんですから・・・。こんなアドバイスをしてはいけませんね」
とクールに流していた。


佐々木正美先生が言うのには、

1)~なさい、という肯定の言葉で、何をしたらよいかを示す
2)指示する際は、あいまいな言葉をできるだけはぶく
3)声かけは言語による表象的な指示なので避け、できるだけ視覚に訴える

というポイントをおさえて、

「水、一回、流す」

という字を書いて、トイレに貼っておいてはどうですか、とアドバイスした。

すると、見事に一回で、トイレから出てきたそうである。


発達障害の子どもについて、だんだんと、きちんと知ろうとする人が増えてきているらしい。
ワタシの身の回りにも、そういった情報が、たくさん目に付くようになってきた。
おかげで、勉強することができる。

「発達障害の子どもたち」 杉山登志郎・著

上記の本を、学校の先生に教えていただいて、GW中に読んでいる。
佐々木正美先生の講演と、つながることが多い。
発達障害の子どもが直面するつらさを、しっかり書かれている。
とくに、小学校の教師として自覚しなければ、と感じるのは、
当の子どもたちが感じる、「迫害」ということ。

迫害、である。
正直、重い言葉だ。

しかし、生きにくさを感じながら、困難な中を生活していく子どもたちが、クラスのいじめや陰湿な迫害にあうことが、無視できないほど多くあるらしい。

それを、正面から相手にできるのは、教員だけだ。