ところが・・・。

ねんどをこねはじめてみて10分後。
出来てきたのは、やはり、お人形さんだったのだ。

それは、細かい部品に分かれた、お人形さんだった。
ぺたん、と粘土板に貼りついた、小さな胴体。
そこに、細長い腕が、一本、くっついている。
まるで、綿棒だ。


こんなのばかりじゃあるまい、と思って、机間巡視をはじめたが、目をうたがうしかなかった。
ほとんど、こういう状態なのだった。

おまけに、器用な女の子が、得意げにせっせと人形作りをする姿を見て、隣の男の子が、
「おお!すげえ、うまいなあ!」
と感に堪えたように言うのだ。

こうするくらいしか、やったことがないのだった。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」

まず、やってみせるしかない。

そこで、いったんすべて手をとめさせ、注目を促した上で、わたしの手つきを見させた。

まず、ねんどを大きくとり、まるごと円柱状にした。

「先生、ぜんぶ使うの」

そうだ。部品が細かくなるのは、ぜんぶまるごと、ねんどを使って人間一体をつくる、ということが伝わっていなかったからだ。こちらの趣意が、ちっとも伝わっていなかったのだ。

「ぜんぶ、使います。ダイナミックな人の動きをつくりたいのです。ですから、全部、あるだけ、まるごとつかんで、こうやって一つに、まとめてからはじめます。」

「えー」(と、びっくりしたような声)

そうして、首から頭部をひねり出し、肩から腕をひねり出し、手の先をつまみ出し・・・、という具合に、やってみせた。

まず、全員がまるごと固まりの円柱状にしたのを確認し、首から頭部、とすすめていった。

(つづく)