自分は、自然体験・生活体験といったものに、まるで乏しい子どもだった。
第一、いちぢくが実をつけて、木になっているところを見たことがなかった。畑の土をさわったこともないし、果樹園も家畜も、身近な存在ではなかった。
柿の木は見たことがあった。また、たとえばリンゴがなる様くらいなら、あるていどは想像できた。蜜柑がなるのも何となく分かる気がする。しかし、いちぢくは見当がつかなかった。
いちぢくだけではなく、植物や野菜全般の本物の香り、味、実の成る姿を知らないで育った。土壌のこと、肥料、水やり、消毒、育っている環境などのことはもちろん、生産者の苦労やつくる喜びなどについては、まったく知る由もない。
「教育と環境」という雑誌に、興味深いデータが載っている。
小学生の自然体験を調査したもので、
「野外でテントをはって寝たこと」については、一回もないと答えたケースが66%あったという。
「日の出日の入りをみたことが一度もない」は41%、1000メ-トル以上の山を歩いた体験については、65%が「一回もない」と答えた。
魚釣りは、35%の児童が「まったくしていない」と答え、豚の世話、牛の世話、鶏の世話にいたっては、いわずもがな。ほとんど、体験したことのない子どもばかりだという。(つづく)
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