高校は郊外にあった。
付近には地下鉄の大きなラインが走り、高速道路にも接続する地区で、車の交通量はかなり多い。一帯は、大きなマンションの立ち並ぶ新興住宅地だった。

私は、箱の中を困惑した表情でみていた。
窓からさしてくる昼間の太陽に照らされて、赤く半透明の球形の実が、ひとつひとつ、あざやかにみえるのであった。まっ裸の果実には光が当たって、そこだけ赤い絵の具を溶かしたような色で、てかてかと光った。

どうも、妙な感じだったのである。
それはあまりにも生き生きとし過ぎていて、灰色の鉄筋コンクリートの中では、かえって、落ち着きのない、間の抜けたものに見えたのだ。 最初、嬉しそうな顔をして見せてまわっていた当の女の子だったが、周囲の褪めたような視線を感じたのか、だんだん元気がなくなって、結局、恥ずかしそうに果実を箱ごとしまってしまった。

そのうちに、午後の授業が始まった。
私は、ずっといちぢくのことが気になっていた。彼女は、海の近くに住んでいるのだ、ということも、その時に思い出したりした。

放課後、帰り支度をしていた彼女に、私は声をかけた。
実は、さっきのいちぢくをもらいたいのだ、と話すと、彼女は笑顔になって、
「箱ごと、あげる」
と言った。
そうして、急いで手提げ袋から取り出すと、そのまま私に渡した。

私は、その箱を誰もいない屋上に運び、一人で中身を食べた。
新鮮だし、甘い。何かの工夫をして冷やしていたらしく、なんだかとてもうまかった。
しかし、感心する一方で、正直なところ、
「こんなものを持ってくるなんて、やっぱり田舎だなあ」
と、当の女の子をからかうような、どこか軽蔑するような気持ちもわいたのだった。(つづく)