中学生になると、ひどい肩凝りに悩まされるようになってしまった。

机に向かっていると肩が張り、首の筋肉が固まってくる。頭が重くなったように感じて持ち上げると、首の付け根に鈍痛を感じる。肩を指でつまんでほぐしていると、これが何とも言えず気持ちいいのである。ピップエレキバンが私の愛用品となった。なんともじじむさい、中学生である。

この肩凝りは高校入試に合格するとすっかりなくなってしまった。
私は身体が軽くなったことを実感して、安堵のため息を漏らした。

しかし、安心するのはまだ早かった。
重く鬱々とした気分をもたらす痛みは、それから何年もたたないうちに復活したのである。
私は東洋医学と全身のツボの研究にいそしみ、教科書を読むよりもそっちの方が忙しいほどであった。ところがさらに驚くべきことに、今度は大学へ入学すると、肩こりはあとかたもなく解消してしまった。不思議だ。あれはいったい、何であったのか。

中学生の同級生に尋ねてみても、肩こりで悩む者はあまりいないようであった。自分だけが、早くから世間一般の中学生をだしぬいて、更年期障害か四十肩か知らないが、肩こりで悩むようになってしまったのである。それがどうしてなのか、当時は分からなかった。

だが、今振り返ってみると、ちょっぴりその理由がわかるような気がする。

つまり、私は親や先生からの要請、期待というものに過剰に反応したのではあるまいか。せいいっぱいその期待に応えようとしたあまり、少しばかり、「やり過ぎた」のではなかったろうか。

小さい頃からお調子者だった私は、ふだんから落ち着きがなかった。
小学校でもだしぬけに席を立ったり座ったりし、おまけに授業の文脈とはまったく関係のないことを口走ったりした。そのため、先生は早くから問題児だと目をつけていたらしい。遠足でも、浮かれすぎて先頭を行き、予定外の別のコースへ迷い込んでしまったりした。また、マラソン大会になるとクラス中の仲間が応援するので調子に乗ってはりきり過ぎ、顔を真っ赤にしてトップでゴールインしたのは良かったが、その後目の前が急に暗くなり保健室に寝かされたこともある。

つまり、どうも私はその場の空気に過剰に反応してしまうようであった。そうして、まったく自分の能力におかまいなくつっ走ってしまうのだった。(つづく)