発表の当日は、校長も職員室も、全体が半旗を掲げたように暗く、
みんなが自分に気遣ってくれるのがわかった。

さて、それから試験のことは忘れて、学年末まですごす。
もちろん、学級担任として、子どもたちの先生としての日常生活だ。
自分が受験生という意識はほとんど消えた。



さて、次の年。

教育委員会から連絡があり、新しい学校への赴任を打診された。
もちろん、どんな学校でもやらせてください、と答える。
これまで、2年間お世話になった学校には、感謝ばかりだ。
教育実習も受けず、初任者研修も受けず、なにも知らずに教壇に立った。
それでも、一応は先生としてやってこれた。
周囲の方が、助けてくれたからこそ、である。

最終日、サプライズがあった。
なんと、終業式当日、教室で最後の時間をすごしていると、保護者が何人も教室に訪れた。
なんだろう、と思っていると、クラスの子がいきなり、それでは先生へ感謝の会を始めます、といって、立ち上がった。
あれよあれよ、というので、司会進行がはじまり、みんなで作成したメッセージボードと、花束の贈呈があった。保護者からも花束が。
拍手が起きる。
目の前で起きていることが、信じられなかった。
自分が、その輪の真ん中にいる。

そういえば、先週からずっと、子どもたちが
「先生はみちゃだめだ」といって、なにかつくっていたが、それが、メッセージボードだったのだ。何かの遊びなのかと思っていたら、こんなサプライズだったとは。

終業式の日、学校全体からの花束と、子どもからの花束と、保護者からの花束と、3つの巨大な花束をもって、帰りの電車にのった。

夜のラッシュ。
とても目立った。
花束を持ったままでは座席にすわれず、荷物をまわりに置いて、立ったままでいた。
扉からのりこんでくる人たちの多くが、その巨大な花束を見て、おどろき、そのままスッと視線をあげて、私の顔をみる。

はずかしい、という気はしなかった。
かわりに、子どもたち、学校への感謝の思いと、
もうひとつ、ほこらしい気持ちが素直に湧いてきた。