30代転職組・新間草海先生の『叱らないでもいいですか』

We are the 99%。転職を繰り返し、漂流する人生からつかんだ「天職」と「困らない」生き方。
高卒資格のまま愛知の小学校教員になった筆者のスナイパー的学校日記。
『叱らない で、子どもに伝え、通じ合う、子育て』を標榜し、一人の人間として「素(す)」にもどり、素でいられる大人たちと共に、ありのままでいられる子どもたちを育てたいと願っています。
生活の中の、ほんのちょっとした入り口を見つけだし、そして、そこから、決して見失うことのない、本当に願っている社会をつくりだそう、とするものです。
新間草海(あらまそうかい)

2020年02月

忽然と子どもの姿だけが

金曜日は本当に不思議な一日でした。

「今日でお別れ、ということになりました」

から始まり、

〇すぐに製作途中の卒業製作の図工作品を仕上げる
〇自分のロッカーを整理
〇荷物をまとめる
〇遊ぶ(以前から計画していた遊びをまだやってない)
〇クラス写真を撮る
〇大量のプリントと課題を配布→説明する
〇やってないテストがある⇒(結局やれず)
〇教室中の掲示をはがす
〇靴箱の各自のネームテープをはがす
〇棚の国語辞典を配布
〇図書館の本を返却
〇児童会で使った備品を片付け
〇その中で給食を食べる
〇サイン会をしあう

なんだかまだ終わることが身近に感じられず、ぼーっとしている子もいた。
給食の献立予定表を掲示板からはがしながら見ていた子が、

「あ、最終日は卒業生のお祝い献立だー。ケーキがでるよ」

と言って喜んでいたが、隣の子が

「え、それ食べられないよ。だって今日で終わりだもん」
「あ、そうか!」

という会話をしていた。

当然、これだけのことを一日でやれるわけもなく、
教室中に荷物が残っているし、掲示も中途半端、まだ来週も子どもたちは来る雰囲気を残してる。

職員も子どもたちも、まだ本当にこれでお別れなんだ、ということをよくのみこめないまま、突然の・・・

最後に、引き出しやらなにやら、大量の荷物を背負った子どもたちが来て、

「先生、サインして」

という。

ランドセルの背中側の白いところに油性ペンで書け、という。
一人ひとりに書いていたら、自分でも不思議な感じで、ちがうメッセージが湧いてくる。
この子にはこれを書こう、この子にはこれ、と次から次へと文章が湧いてくる。
わたしがにこちゃんマークを日記に書くのが常だったので、

「先生、日記に書いてたにこちゃんマークを書いて」
「あ、うちも」

何度もハイタッチをして、がんばれよ、とそのたびに声をかける。
これでおしまい、というが、また来る。
また、ハイタッチ。
順番にやって、終わりがない。だって今日がお別れだと思わないんだもの。
本当にこれで最後なのかなあ、とお互いに不思議な気持ちになりながら、それを確認するかのようにハイタッチを何度もする。

今はただ、数週間後の卒業式が無事に行われることだけを願う。

教室へもどってきてみたら、誰もいなくて、がらーんとしている。
黒板には、子どもが書いた落書き。

荷物は、机の上にたくさんのっている。
子どもだけが、忽然と、いなくなった。

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全国すべての公立小中高休校へ 首相表明

職員室に怒号が飛び交う。
「あべえええええええ!!!どうしろってんだァァァァ!!」
ふだんは温厚で、おだやかな表情しか見たことのない1年生の先生が、怒りで震えている。

かわいい1年生。
ほうっておける親がどれだけいるか。
親も、生活がかかっている。
勤務をそうたやすく、休めるわけがない。

そこまで、考えていないのか、首相やそのまわりの人たちがどれだけ「考えた」のか、どうしても疑問視したくなる。当然、親はどうするか、ということへの言及がなされるべきだ。
ところが、ニュースでそのことに触れた形跡がまったく、無い。

1年生の子を何週間も、朝から夕方まで、ほうっておける親がいるのか・・・

安倍首相の目線の先には、どんな家庭像が映っているのだろう。
はたらいている親の姿は、見えないのか。

夕方、ニュースが流れた直後、先生たちの動きが加速した。
印刷機のまわりには行列ができる。
「〇〇先生、それが終わったらついでにこれも印刷お願いします!」
「はい、わかりました」
「ここの印刷機、終了です。次、何年生の先生が刷りますか?」

つまり、子どもたちへの課題を今から印刷し、
明日渡さなければならないのだ。

たしかにまだ決定ではない。
しかし、準備していませんでした、では話にならない。
もしかしたら、2日から本当に休校になってもおかしくないと感じさせるような、首相の発言である。首相の脳裏に、職員室に飛び交う怒号と、自身へ向けられた呪詛、そして先生たちのけわしい表情が浮かんでいるだろうか?想像できるのだろうか、この首相に・・・

慌てて印刷機へ大集合する教員、
他の学校へ緊急連絡を行う教頭、
急遽、自動車で会合へ向かう校長、
子どもへくばるもののリストを作り始める若手教員、

「明日のおたより、全面改訂ですッ!見出し、これでいいですかーッ!」
「その見出し、ストップです!!印刷止めてください!停止、停止ーー」
「〇〇先生、その印刷済みの地域子ども連絡会の書類も、廃棄です!別の箱にしてくださいッ!!」
「△△先生、緊急のお電話です!」
「先生、児童センターから〇〇先生が来られてますッ!」

もう、なにがなにやら・・・みんな目が泳いでしまっている。

気を利かせた若い先生が一人、

「おにぎり買ってきます!ほしい方、挙手してくださーーーい」
「はい」
「はい!」
「ハイッ!うちの学年、全員分お願いします!」
「わ、わかりました!!」

この状況が、おそらく全国の大半の小学校で、
今現在、まきおこっていることだろうと思います。

konran

やんちゃくんがやさしくなる現象

やんちゃくんがやさしい、のですって。

やさしいクラスの女の子が、日記に

「Rくんって、本当はやさしいなあーと最近思います」

と書いてきた。
わたしは嬉しくて、

「そうでしょう!Rくん、やさしいよね!」

とコメントを書いた。

やんちゃくんがなぜ、年度末が近づいてくると、やさしくなるのか。
それは、だんだんと、自分にとっての、この空間の価値が、沁みてくるからじゃないかと思う。

友達と当たり前のように、冗談を言ったり、あだ名で呼びあって笑ったり、
勉強して意見を出し合ったり、床掃除の途中にぞうきんの手と手がぶつかったり、「お前の机、もうちょっとこっちだろ」とか言ったり、赤白帽子を友達のと間違えたり・・・・

それが、だんだんと終わっていくのを感じて、なんだかせつなくて、やさしくなるのではないか。

実は、やんちゃくんは、
人肌のぬくもりの、いとおしさ、可愛さ、やさしさを、
きちんと感じているのではないかと思うネ。

腹を立てる人ほど、その腹を立てていることの自分の姿を、
いっしょうけんめいに抱きしめているのだから。

やんちゃくんは、みんなの前で、心を吐き出した分、
みんなのことを心に入れよう、入れようとしていると感じる。

やんちゃくんのやさしさを、じわっと感じて、それを夕方、家にかえって
思い出して、日記に書いたその女の子も、そのやんちゃくんのやさしさを、
手のひらににぎったカイロのようにあたたかく感じていたのだ。

6年生なのに、女子が男子にやさしいです。
学校で一番迷惑をかけている男子に、一目置いているのがうちのクラスの女子たちです。

「わたしにはできない」

と、かつて、言っていたからね。

「あんなふうにみんなの前で、堂々と意見を言えるなんて、わたしには無理」

やんちゃくんは、授業参観だろうが、校長講話の最中だろうが、
自分の意見は堂々と言う。
だれにはばかることなく、だれに遠慮することもなく、
自分の心がそうだと思えば、

「そう思った!」

という。

それを、女子は、実はまぶしく見ている。

他の先生にいやになるほど怒られて、クラスのみんなでいやーな空気になっているときも、
ちゃんと上を向いて、悪びれず、堂々と、口を真一文字に結んでいるやんちゃくんを、
ときには迷惑に思いながらも、実は、「なるほど」と思って見ているのだ。

休み時間に走り回ったやんちゃくんは、教室へ帰ってきて、
暑い!と言って、すぐに窓を開ける。
女子が、すかさず、「寒い!」と言って、窓を閉めさせる。

「ちぇ」

と、口をとがらせて、やんちゃくんは廊下に出る。
そして、ベターっとなって、

「教室の中、暑すぎるわ」

という。
女子たちはそれを聞いて

「信じられん。ドア閉めて」

と言って、寒そうに身を寄せ合う。

「・・・あいつ、なんでこの寒いのに外に行けるんだろ」




やんちゃくんは、女子からは理解されない。
しかし、そんなやんちゃくんのことを、女子たちは非常に興味深げに観察している。

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