今年の秋以後、映画界で話題になっていたのが、伝説のバンド、クイーンの実話を元にした映画、「ボヘミアン=ラプソディ」だ。
そのリード・ボーカルにして、史上最高のエンタティナーと讃えられた、フレディ・マーキュリーの生きざまを映し出した、ミュージック・エンターテイメント。
すでに映画の世界では、あの不朽の名作、スターウォーズに匹敵するほどの動員数を稼ぐのではないかというから、凄すぎる。
ところで、落語界に目を向ければ、この年始のビッグイベント、正月初席がすごい。
1月3日の鈴本演芸場、第三部。これがいちばんのおすすめだろう。
ちなみに、ラインナップはこうなっている。
ここまで見事な演目構成を、思う存分楽しめるとあれば、行かない理由が見つからない。
まさに、クイーンの『ボヘミアンラプソディ』を超える、稀代のエンターテイメント・ショー、である。
このうち、背筋を伸ばし、たたずまいを直して見なくてはいけないのが仲入り後の、柳家小三治だろう。すでに80代に入ろうかという師匠の、そのご尊顔をうかがうだけでも、価値のあるチケットになる。
小三治さんで正統な古典落語を聞いて、心境を整え、新年のあたらしい出発を心に誓うことが叶うのだから、落語ファンならずとも、日本人なら全員が行って当然だと思う。
そしてそれだけではない。師匠のあと、柳家喬太郎がでる。あの、陽気な顔を見られるだけでも『福』が舞い込んでくる気がする。
さらには、紙切りの正楽師匠も出る。
あの、とがった鋏(はさみ)をどう使うか分からないから、危険な香りがぷんぷんする師匠だ。あまり近くの席で見ないほうがいい。下手なホラー映画よりももっと怖い。だが、その怖さを間近で体感できるとあれば、行かないわけにはいくまい。
振り返ってみると、大御所の小三治師匠に至るまでの、道のりが、心憎い。
最初は、曲独楽の三増紋之助さん。
正月のめでたい気分を、さっくりと味あわせてくれそうだ。
会席料理のコースでいったら、先付、お通しにあたる。
まずはさっぱり、上品な赤貝の酢の物、といった感だろう。
次に落語、林家たけ平。こぶ平の弟子だが、小朝の指導も生きている本格派だ。
料理で言えば、前菜・小鰭(こはだ)、という感じ。
塩と酢で締めたやつは、口中がさっぱりとしながら味がある。
その後、柳亭燕路、おしどり、ときて、講談・宝井琴調(たからい きんちょう)だ。
琴調さんは、年末になると「暮れの鈴本 琴調六夜」として、鈴本の夜をしきっている重鎮。
五代目(先代)の馬琴さんが師匠という、本物の正統派であり、今の講談界でもっとも実力のある人だろう。
ここで、ちょっと、吸い物、お刺身、と一気に出てきた感がありますね。
大物を味わったあとで、ホンキートンクの漫才を軽く味わう。
これもまた、洒落ていますな。
その後、落語のオンパレード。たぶん、顎がひきつるくらい笑えるでしょう。
五街道雲助
春風亭一朝
桃月庵白酒
柳家権太楼
と。
次から次へと、舞台にのぼってくる、じいさんたちの顔。
これでもか、これでもか、と眺めることができます。
年を取った男の人の顔というのは、なぜこうも、味があるのでしょう。
歴史というものは、なかなか理解できないものですが、パッとみて感じるのにこんなにうってつけのものはありません。すなわち、じいさんの顔です。60分もずっと長い間、お年寄りの顔をみていれば、時の流れ、というものをきちんと理解することができるはずです。
さて、仲入りには必ずトイレに行きましょう。
そして、かならず手を洗い、うがいをして、身を清めます。
懐(ふところ)にしのばせてきた塩を口にふくみ、気持ちを静め、集中します。
ホールの廊下を静かに歩き、座席へゆっくりと座ったら目を閉じて、深呼吸しておきます。
目はまだしばらくつむっておきましょう。仲入りが終わり、出囃子が聞こえます。
出囃子の音を聞きながら、
「今は江戸時代だ、江戸時代だ、江戸時代だ」
と、3べん、唱えましょう。
そして着てきた和服のたもとから手を入れて、襟がたるんでいないかチェック。
もしかしたら小三治師匠と目が合うかもしれません。これは、まさかのときのための準備です。
最後に、深く息をしながら、ゆっくりと目を開きます。
きこえてくるのは、・・・小三治師匠の出囃子、『二上りかっこ』。
あの、軽妙なリズムが聞こえてくるだけで、胸をうつものがありますね。
さあ、あなたの目に映るのは、あの、小三治師匠です。
蒸し物、焼き物、煮物、ご飯もの、すべてを凌駕する、メインディッシュは、この方でしょう!
そのリード・ボーカルにして、史上最高のエンタティナーと讃えられた、フレディ・マーキュリーの生きざまを映し出した、ミュージック・エンターテイメント。
すでに映画の世界では、あの不朽の名作、スターウォーズに匹敵するほどの動員数を稼ぐのではないかというから、凄すぎる。
ところで、落語界に目を向ければ、この年始のビッグイベント、正月初席がすごい。
1月3日の鈴本演芸場、第三部。これがいちばんのおすすめだろう。
ちなみに、ラインナップはこうなっている。
【 第 三 部 】
当日券発売:12時00分
開 場 : 17時20分
開 演 : 17時30分
終 演 : 20時40分
----------
17:30
曲 独 楽 三 増 紋之助
落 語 林 家 たけ平
落 語 柳 亭 燕 路
音 曲 漫 才 お し ど り
講 談 宝 井 琴 調
18:10
漫 才 ホンキートンク
落 語 五街道 雲 助
落 語 春風亭 一 朝
落 語 桃月庵 白 酒
粋 曲 柳 家 小 菊
落 語 柳 家 権太楼
お仲入り 19:10
壽 獅 子 太 神 楽 社 中
落 語 柳 家 小三治
も の ま ね 江戸家 小 猫
落 語 柳 家 喬太郎
紙 切 り 林 家 正 楽
落 語 柳 家 三 三
20:40
ここまで見事な演目構成を、思う存分楽しめるとあれば、行かない理由が見つからない。
まさに、クイーンの『ボヘミアンラプソディ』を超える、稀代のエンターテイメント・ショー、である。
このうち、背筋を伸ばし、たたずまいを直して見なくてはいけないのが仲入り後の、柳家小三治だろう。すでに80代に入ろうかという師匠の、そのご尊顔をうかがうだけでも、価値のあるチケットになる。
小三治さんで正統な古典落語を聞いて、心境を整え、新年のあたらしい出発を心に誓うことが叶うのだから、落語ファンならずとも、日本人なら全員が行って当然だと思う。
そしてそれだけではない。師匠のあと、柳家喬太郎がでる。あの、陽気な顔を見られるだけでも『福』が舞い込んでくる気がする。
さらには、紙切りの正楽師匠も出る。
あの、とがった鋏(はさみ)をどう使うか分からないから、危険な香りがぷんぷんする師匠だ。あまり近くの席で見ないほうがいい。下手なホラー映画よりももっと怖い。だが、その怖さを間近で体感できるとあれば、行かないわけにはいくまい。
振り返ってみると、大御所の小三治師匠に至るまでの、道のりが、心憎い。
最初は、曲独楽の三増紋之助さん。
正月のめでたい気分を、さっくりと味あわせてくれそうだ。
会席料理のコースでいったら、先付、お通しにあたる。
まずはさっぱり、上品な赤貝の酢の物、といった感だろう。
次に落語、林家たけ平。こぶ平の弟子だが、小朝の指導も生きている本格派だ。
料理で言えば、前菜・小鰭(こはだ)、という感じ。
塩と酢で締めたやつは、口中がさっぱりとしながら味がある。
その後、柳亭燕路、おしどり、ときて、講談・宝井琴調(たからい きんちょう)だ。
琴調さんは、年末になると「暮れの鈴本 琴調六夜」として、鈴本の夜をしきっている重鎮。
五代目(先代)の馬琴さんが師匠という、本物の正統派であり、今の講談界でもっとも実力のある人だろう。
ここで、ちょっと、吸い物、お刺身、と一気に出てきた感がありますね。
大物を味わったあとで、ホンキートンクの漫才を軽く味わう。
これもまた、洒落ていますな。
その後、落語のオンパレード。たぶん、顎がひきつるくらい笑えるでしょう。
五街道雲助
春風亭一朝
桃月庵白酒
柳家権太楼
と。
次から次へと、舞台にのぼってくる、じいさんたちの顔。
これでもか、これでもか、と眺めることができます。
年を取った男の人の顔というのは、なぜこうも、味があるのでしょう。
歴史というものは、なかなか理解できないものですが、パッとみて感じるのにこんなにうってつけのものはありません。すなわち、じいさんの顔です。60分もずっと長い間、お年寄りの顔をみていれば、時の流れ、というものをきちんと理解することができるはずです。
さて、仲入りには必ずトイレに行きましょう。
そして、かならず手を洗い、うがいをして、身を清めます。
懐(ふところ)にしのばせてきた塩を口にふくみ、気持ちを静め、集中します。
ホールの廊下を静かに歩き、座席へゆっくりと座ったら目を閉じて、深呼吸しておきます。
目はまだしばらくつむっておきましょう。仲入りが終わり、出囃子が聞こえます。
出囃子の音を聞きながら、
「今は江戸時代だ、江戸時代だ、江戸時代だ」
と、3べん、唱えましょう。
そして着てきた和服のたもとから手を入れて、襟がたるんでいないかチェック。
もしかしたら小三治師匠と目が合うかもしれません。これは、まさかのときのための準備です。
最後に、深く息をしながら、ゆっくりと目を開きます。
きこえてくるのは、・・・小三治師匠の出囃子、『二上りかっこ』。
あの、軽妙なリズムが聞こえてくるだけで、胸をうつものがありますね。
さあ、あなたの目に映るのは、あの、小三治師匠です。
蒸し物、焼き物、煮物、ご飯もの、すべてを凌駕する、メインディッシュは、この方でしょう!