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わたし自身は、書を習ったことがありません。
子どもの頃は、親から
「字がきたない!!」
と何度も言われて、コンプレックスを抱えていました。
比べられたのが、姉でした。
姉はいつも書道コンクールで「金賞」レベルでしたから、
母親は、いかにも適当なわたしの字が、残念でならなかったのでしょう。
ところが、わたしは字を書くことが好きです。
書道を見るのも、面白い、と思います。
公民館の看板が、毛筆で書かれているのを見つけると、
「こんな筆づかいかな」
と、頭の中でなぞって、書いていることもあります。
新しい漢字の学習は、とくにお気に入り。
なんでこんな字なのか、形なのか、不思議に思えてくる。
象形文字はとくに大好きです。
わたしの勤務校では、宿題で漢字学習をしてくることになっています。
ノート1ページ。
みんな、ずらずら、と書きます。
わたしが子どもの頃も、似たようなことをしていたと思いますが、
けっこう、さぼっていましたね。
また、字も適当で、汚かったと思います。
そういう自分の負い目があるためか、忘れた子を責めないです。
ですが、クラスのほとんどの子が、ていねいに漢字をやってきます。書いてきます。
それがなぜなのか、本当のところは分かりません。
漢字ノートを見ながら、
「きれいに書いたねえ」
と、感にたえたように、つぶやいているだけです。
もし近くにその子がいたら、顔をみて、言います。
また、いたずら坊主のFくんは、宿題を出すには出すが、とても乱雑な字です。
彼の宿題は、たった1文字だけ、〇をつけます。
中でも、まあ、マシな字をひとつだけ選んで、
大きな声で、
「今日は、これや!」
と言いながら、〇を付けます。
「こいつは、美文字(びもじ)やで!」
と言いながら、〇を。
◎ではないですよ。〇です。
すると、Fくんはちゃんと遠くからチラッと、こっちを見ていて、
わたしが〇をつけるのを、見届けているのです。なんとなしに、という雰囲気で、ネ。
たまに、わたしが〇をつけているところに女子がきて、
「なんだこれ、Fくん、字、きたなーい」
と言うことがあります。
わたしは顔をくしゃくしゃにして、
「Fくん、たのむよ・・・」
と泣きそうになりながら、オーバーに言います。
がっくし、と肩を落とし、
「泣けてくるがな」
と言うと、
女子たちは、ワッと受けますが、その光景も、やはりFくんは遠くから、見ることもなしに
ちゃんと、見ているのです。
たまに、うんと字のきれいな子の漢字ノートを、クラス全員に見せて回ることがあります。
「先生、字がうつくしすぎて、泣けてきた」
と言って、ハンカチで目がしらを押さえながら、クラス中に歩いて見せに行きます。
とくにFくんの前にくると、
「どうや、Fくん、すべての字が美しいやろ」
と言うと、Fくんは、
「あー、はいはい」
と澄まして、言います。
それを聞いて、クラス中のみんなが、ワッとなって、また笑うのです。
わたし自身は、書を習ったことがありません。
子どもの頃は、親から
「字がきたない!!」
と何度も言われて、コンプレックスを抱えていました。
比べられたのが、姉でした。
姉はいつも書道コンクールで「金賞」レベルでしたから、
母親は、いかにも適当なわたしの字が、残念でならなかったのでしょう。
ところが、わたしは字を書くことが好きです。
書道を見るのも、面白い、と思います。
公民館の看板が、毛筆で書かれているのを見つけると、
「こんな筆づかいかな」
と、頭の中でなぞって、書いていることもあります。
新しい漢字の学習は、とくにお気に入り。
なんでこんな字なのか、形なのか、不思議に思えてくる。
象形文字はとくに大好きです。
わたしの勤務校では、宿題で漢字学習をしてくることになっています。
ノート1ページ。
みんな、ずらずら、と書きます。
わたしが子どもの頃も、似たようなことをしていたと思いますが、
けっこう、さぼっていましたね。
また、字も適当で、汚かったと思います。
そういう自分の負い目があるためか、忘れた子を責めないです。
ですが、クラスのほとんどの子が、ていねいに漢字をやってきます。書いてきます。
それがなぜなのか、本当のところは分かりません。
漢字ノートを見ながら、
「きれいに書いたねえ」
と、感にたえたように、つぶやいているだけです。
もし近くにその子がいたら、顔をみて、言います。
また、いたずら坊主のFくんは、宿題を出すには出すが、とても乱雑な字です。
彼の宿題は、たった1文字だけ、〇をつけます。
中でも、まあ、マシな字をひとつだけ選んで、
大きな声で、
「今日は、これや!」
と言いながら、〇を付けます。
「こいつは、美文字(びもじ)やで!」
と言いながら、〇を。
◎ではないですよ。〇です。
すると、Fくんはちゃんと遠くからチラッと、こっちを見ていて、
わたしが〇をつけるのを、見届けているのです。なんとなしに、という雰囲気で、ネ。
たまに、わたしが〇をつけているところに女子がきて、
「なんだこれ、Fくん、字、きたなーい」
と言うことがあります。
わたしは顔をくしゃくしゃにして、
「Fくん、たのむよ・・・」
と泣きそうになりながら、オーバーに言います。
がっくし、と肩を落とし、
「泣けてくるがな」
と言うと、
女子たちは、ワッと受けますが、その光景も、やはりFくんは遠くから、見ることもなしに
ちゃんと、見ているのです。
たまに、うんと字のきれいな子の漢字ノートを、クラス全員に見せて回ることがあります。
「先生、字がうつくしすぎて、泣けてきた」
と言って、ハンカチで目がしらを押さえながら、クラス中に歩いて見せに行きます。
とくにFくんの前にくると、
「どうや、Fくん、すべての字が美しいやろ」
と言うと、Fくんは、
「あー、はいはい」
と澄まして、言います。
それを聞いて、クラス中のみんなが、ワッとなって、また笑うのです。