やんちゃくんがやさしい、のですって。

やさしいクラスの女の子が、日記に

「Rくんって、本当はやさしいなあーと最近思います」

と書いてきた。
わたしは嬉しくて、

「そうでしょう!Rくん、やさしいよね!」

とコメントを書いた。

やんちゃくんがなぜ、年度末が近づいてくると、やさしくなるのか。
それは、だんだんと、自分にとっての、この空間の価値が、沁みてくるからじゃないかと思う。

友達と当たり前のように、冗談を言ったり、あだ名で呼びあって笑ったり、
勉強して意見を出し合ったり、床掃除の途中にぞうきんの手と手がぶつかったり、「お前の机、もうちょっとこっちだろ」とか言ったり、赤白帽子を友達のと間違えたり・・・・

それが、だんだんと終わっていくのを感じて、なんだかせつなくて、やさしくなるのではないか。

実は、やんちゃくんは、
人肌のぬくもりの、いとおしさ、可愛さ、やさしさを、
きちんと感じているのではないかと思うネ。

腹を立てる人ほど、その腹を立てていることの自分の姿を、
いっしょうけんめいに抱きしめているのだから。

やんちゃくんは、みんなの前で、心を吐き出した分、
みんなのことを心に入れよう、入れようとしていると感じる。

やんちゃくんのやさしさを、じわっと感じて、それを夕方、家にかえって
思い出して、日記に書いたその女の子も、そのやんちゃくんのやさしさを、
手のひらににぎったカイロのようにあたたかく感じていたのだ。

6年生なのに、女子が男子にやさしいです。
学校で一番迷惑をかけている男子に、一目置いているのがうちのクラスの女子たちです。

「わたしにはできない」

と、かつて、言っていたからね。

「あんなふうにみんなの前で、堂々と意見を言えるなんて、わたしには無理」

やんちゃくんは、授業参観だろうが、校長講話の最中だろうが、
自分の意見は堂々と言う。
だれにはばかることなく、だれに遠慮することもなく、
自分の心がそうだと思えば、

「そう思った!」

という。

それを、女子は、実はまぶしく見ている。

他の先生にいやになるほど怒られて、クラスのみんなでいやーな空気になっているときも、
ちゃんと上を向いて、悪びれず、堂々と、口を真一文字に結んでいるやんちゃくんを、
ときには迷惑に思いながらも、実は、「なるほど」と思って見ているのだ。

休み時間に走り回ったやんちゃくんは、教室へ帰ってきて、
暑い!と言って、すぐに窓を開ける。
女子が、すかさず、「寒い!」と言って、窓を閉めさせる。

「ちぇ」

と、口をとがらせて、やんちゃくんは廊下に出る。
そして、ベターっとなって、

「教室の中、暑すぎるわ」

という。
女子たちはそれを聞いて

「信じられん。ドア閉めて」

と言って、寒そうに身を寄せ合う。

「・・・あいつ、なんでこの寒いのに外に行けるんだろ」




やんちゃくんは、女子からは理解されない。
しかし、そんなやんちゃくんのことを、女子たちは非常に興味深げに観察している。

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