対話ができるようになるためには、「わからなくなって頭の中が白くなる」ことが重要です。
その体験を生み出すための、しかけが要ります。

わかりやすい道徳の授業として、下記を紹介します。
道徳の授業プランに、近頃流行しているのが、「どう、解く?」のシリーズである。
ポプラ社から、児童向けの単行本が発刊されている。

良い点は、すべての学習問題を、「比べる」要素で構成しなおすことが可能なことだ。

(※参考:「比べてみよう」の指示の価値)

以下は、比較するために有効な、学習問題の文。

〇ついていい嘘と、ついちゃいけない嘘と、どう違う?
〇人数が多い方が正しいのか、少ない方が正しいのか?
〇殴ってよいのは、正義のヒーローか、悪役か?
〇殺してよいのは、蝶か猫か?

など。
「比較する」作業は、子どもにとっては、とっかかりやすい。
これは授業の仕組みとして、有効な手段だ。

中にはけっこうドギツイ問題もあるから、授業をするのに躊躇するくらいだが・・・。
しかし、子どもは生きている。現代社会に生きている。これからも生きてゆく。
こういう問題を、考えてきた子と考えなかった子では、やはり違いも出てくるだろう。

さて、下記は実際に行った授業展開 ↓ です。
参考になりましたら、これ幸い・・・。

〇発問:嘘をついてもいいかどうか

子「だめ」
子「ときと場合によるんじゃ」
子「やむを得ない場合はOKかも」

〇発問:やむをえない場合とは?

子「誕生日でサプライズのときとか。わたし、知らないよ~ってフリをするでしょう」
子「なにか誘ってもらったとき、その気がなくても、いいよーってついていくときがある」
子「プレゼントもらって、いい色じゃなくても、あ、うれしいー、ありがとうーって言う」

〇発問:ついていい嘘とついちゃだめな嘘とのちがいは?

子「相手のためになる嘘ならOK」
子「相手を傷つける嘘はだめ」
子「周りの人に迷惑をかける嘘はダメ」
子「信頼をうしなっちゃうほどのはだめ」
子「とりかえしのつかない嘘はぜったいダメだと思う」

↑ 上の意見をみていて、ある子が

相手のためになる、と考えている時点で、それはもう、嘘というより本音に近いのでは」
「どういうこと?」
「もう、やさしさが充満しているようだから、相手のことを願ってのことだから、その気持ち自体は、もう嘘とはいえないと思う」
「ふーん」(わかったようなわからんような・・・)


〇発問:では、「相手のためになる嘘は、ついてもいい」の?

子「いいと思う」
子「必要だと思う」
子「でも、本当に相手のためになればいいけど、そうでなかったらイヤだな」
子「あなたのため、と言いながら、逆に迷惑をかけたりして・・・」
子「それは、いやー」
・・・
子「相手のためになる、というの、本当にそうなのかどうか、判断できない」
子「してほしくないことを押し付けられるのもいやだね」
子「相手のためになると思っていても、ちがうかも」


〇発問:相手のためになるかどうか、どうやったらわかるの?

子「聞いてみなくちゃわからない」
子「本人に、確認してみないと」
子「でも、本人も気を使って嘘をいうかもね」
子「お互いに、相手のことを思って、遠慮しあう感じかも」
子「めんどうだなあ」
子「こうしようと思うけど、どう?、と聞いて、本当の気持ちを言ってもらうのがいい」
子「本当の気持ちを言ってくれない場合は、どうなるの?」
子「本当の気持ちを知りたいから、本当の気持ちを言ってね、と最初に言うべき」
子「同じクラスの子なら、本当の気持ちを言えると思うけど。ほかのクラスの男子には言わないかも」
子「日頃のつきあいのレベルによるよねえ」
子「そうそう。日頃のつきあいが大事だ」
子「ふだんから、ちゃんと話したり、会話している子ならOK」
子「初対面の子には、本当の気持ちを言えないと思う」
子「中学で別の学校から来た子には、最初は言えない」
子「お互いにいいな、と思えてから初めて、本当の気持ちを話せる」
子「時間がかかるんだよ。人間関係は・・・(白目)」


結論は、

ふだんからのコミュニケーションが大事

となりました。

授業後、焼き鳥の好きなAくんが、わざわざ私のところへ来て

「先生も、S先生とかといっしょに、飲みに行けば?」

ワタシ、それを聞いて・・・『お、おおう、』と不器用な反応しか返せませんでした。

yakitori