困らない叱らない。新間草海(あらまそうかい)の教室日記

漂流する人生からつかんだ「困らない」生き方とは。
転職を繰り返し、高卒資格のまま小学校の教員になった筆者のスナイパー的学校日記。
『叱らない で、子どもに伝え、通じ合う、子育て』を標榜し、一人の人間として「素(す)」にもどり、素でいられる大人たちと共に、ありのままでいられる子どもたちを育てたいと願っています。
生活の中の、ほんのちょっとした入り口を見つけだし、そして、そこから、決して見失うことのない、本当に願っている社会をつくりだそう、とするものです。
新間草海(あらまそうかい)

御所を歩きながら、「ここはかつての公家がいた団地みたいなとこで・・・」と加藤さんが言う。
古来より、天皇家を支える公家の集団がいた。大中小の公家族が、御所のまわりをとりまくように住んでいたらしい。長屋や団地のように、ずらりと並んだ公家の屋敷が並ぶ様を想像しながら、わたしは歩いた。

京都の御所


「蛤御門」に着いた。
「鉄砲玉の痕跡だと言う説もあるし、そうではなく、なにかのキズだろう、という説もあって、断定できないけれど、ありゃあ鉄砲の弾のようだけどねえ」
加藤さんは鉄砲玉説をとりたい、という。

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「ところで、なんでハマグリの門なのか、分かりますか?」

加藤さんの顔がにやっと笑う。
なにしろこの加藤さん、クイズ王としてアタック25で優勝したことがあるのだ。優勝の景品としてテレビ局が招く海外旅行の経験もあるという加藤さんが、雑学を披露してくれるのは、ちょっと愉快であった。

「江戸時代に大きな火事がありましてね。市中がほとんど燃えたのですよ。ところが御所は大きな門で閉ざされている。ふつうは門が閉まっているから逃げられないんだけど、火事が起きたときはここからの通行が許されたのですね。それで『焼けて口あく蛤』ということで、ハマグリ御門とよばれることになったらしいのですねえ」

加藤さんは御年69歳、まもなく古希を迎えられる年。
ざっくりと教えてくださる雑学が、わたしの中のさまざまな歴史学習のデータと次第に結びついてくる。ちょっとした質問やわたしの反応に、敏感に反応してくださるのがありがたい。さすがはクイズ王、という感じ。

次に、加藤さんがちょっとこれ見てみてください、と示したのが、これ。

屋根の瓦の先っちょについている、紋様(モンヨウ)だ。

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菊の紋章


「ああ、あの先のマークは、菊ですよね?」

天皇家のいた場所なのだから、その家柄を表すための紋様として、菊のデザインが使われたのだろう。そう思った。ところが加藤さんは、ちがう見解を述べた。

「わたしは、これは、魔除けの意味だろうと思う」

なんと、呪術的な意味のある、文化人類学的な視点での、紋様だという。

菊は、除虫菊なんてのもあるとおり、昔から匂いの強い特別な植物だ。動物や虫が嫌うような、強い芳香をもつ。それをデザインにあしらっているのは、他から悪いモノをよせつけない、という意味が一番強いのじゃないか、と加藤さんは持論を述べた。

なるほど。
菊は独特の芳香がありますね。昔からお便所で蛆の発生を防ぐのに使われたり、台所の食品保存で使われたりするなど、殺菌のために用いられる植物であった。大事なものを護ろうとするとき、まっさきに古代の人が頭にイメージしたのが、身近な植物、「菊」だったのではないか。
そう考えると、今の天皇家が用いる菊のデザインも、古代の人の知恵がリンクしていると思えてくる。

わたしはそれから、建物を見る際にはよくよく、その屋根にあしらわれた紋章を見るようにこころがけることにした。

御所の瓦には、ほとんど菊マークが使われている。
ところが一歩御所を離れ、同志社大学の構内を歩いていると、それが違ってくる。
でんでん太鼓に描いてあるぐるぐるとしたマークになっているのだ。

でんでん太鼓マーク


「加藤さん、あの、ぐるぐるっとしたマークは、何なのですか?」

クイズ王の加藤さんが即答する。
コインを投げ込むとすぐに反応してポチャンと水音をたてる、湧き出る泉のような脳をしているのだろう。加藤さんによると、あれは、もともとは無限・永遠をあらわす意匠。始まりと終わりが境無くつづいている。とめどなく流れる水の動きにも通じていて、建物にはよく使われるらしい。

なるほど。でんでん太鼓のマークとばかり思っていたが、あの模様にも、かなり深い意味がこめられていたようだ。

ところで、見ていくと、さまざまなものが、屋根の突端に、くっついているのである。

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「ふひえー」

わたしは一つ一つをみるたびに、

「ああっ、ここは鳥だ!」

とか、

「あーッ、ここはなんか変な動物がッ!」

とか、

「ふひゃあ、ここは桃がくっついている!」

とか、そのたびに驚いて立ち止まるので、通行人と何度かぶつかりそうになった。

クイズ雑学王の加藤さんは、そのたびに、ああ、あれはですネ・・・と語ってくれるのだ。

京都を旅する際は、雑学王でクイズ番組に出て優勝したくらいの方をガイドに依頼した方がよいことがこのことだけでも分かろうというものだ。

この中で、一番分からないのは、桃、であった。(つづく)
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