困らない叱らない。新間草海(あらまそうかい)の教室日記

漂流する人生からつかんだ「困らない」生き方とは。
転職を繰り返し、高卒資格のまま小学校の教員になった筆者の自虐スナイパー的学校日記。
『叱らない で、子どもに伝え、通じ合う、子育て』を標榜し、一人の人間として「素(す)」にもどり、素でいられる大人たちと共に、ありのままでいられる子どもたちを育てたいと願っています。
生活の中の、ほんのちょっとした入り口を見つけだし、そして、そこから、決して見失うことのない、本当に願っている社会をつくりだそう、とするものです。
新間草海(あらまそうかい)

今回、わたしはかねてからお会いしたかった京都のプロのガイドさんに会うことにした。
6年生の担任をする、と決まる頃から、歴史の授業を大事にしたい、と思うようになったからだ。
京都を久しぶりに歩いてみたい。
それも、きちんと、ガイド付きで。
歴史の授業に、新たな視点が加わることだろう。

京都駅に着くと、八条口とは反対側の中央出入り口に出た。
ここには、羅生門の模型が立っていて、ちょっとした写真スポットになっている。

羅生門1


わたしが羅生門の説明をモニターで見ようと近づくと、帯(おび)を貝の口にきゅっとしめた粋な着物姿の欧米人が、i-phoneで自撮りしているところだった。
その欧米人はさまざまな角度で自分を撮影していたが、結局、羅生門をナナメ下から見上げるような角度がもっとも気に入ったらしかった。

彼は表情をさまざまに変え、髪をやわらかくかきあげたり、顔の向きを変えて流し目をしたり、いろんな工夫をした。3分ほどして、わたしが凝視していることに気付いて、はにかんだような笑顔になった。
わたしは「OK、OK、気の済むまで自撮りしてほしい」と思い、それを伝えようとした。

「OK、OK、I want you to take your self-portrait ・・・until you feel good」

顔を赤くして、なんとかしどろもどろの怪しげな英語を繰り出す。
すると、たいへんにきれいな日本語が返ってきた。

「すみません。お邪魔でしたか。羅生門を御撮りになりますか?」

フランス仁1


いえ、人を待っているので、大丈夫です。
わたしはボディランゲージを駆使して顔の前で大げさに手を振って大丈夫だという意を伝えたが、その後、彼が芥川の小説を知っているかどうか、とても聞きたくなった。
うまく聞けるか自信はなかったが、

「Do you know the story of RASHOMON written by AKUTAGAWA・・・」

すると、たいへんにきれいな日本語が返ってきた。

「ああ、羅生門は小説で読みました。ちょっとこわいところもありますが、京都に住んでいる身としてはとても身近なオハナシですね」

彼はどこまでも端正な顔立ちを崩さず、真面目にしっかりとした口調で話した。
どこの国から来たかとこれまた必死の英語で尋ねると、母国はフランス、と言う。
フランス語だったのか、しまった、とわたしは思った。
わたしが残念そうな顔をしていると、涼しそうな着物姿の彼はわたしに、

「観光ですか?」

と尋ね、わたしが懸命に、

「ウイ、ウイ」

と言うと、笑って「京都を楽しんでくださいね」と、言いながら去っていった。


さて、今回お世話になるガイドさんの名前は、加藤さん。
英語とロシア語のふたつのガイド国家資格を持つ、プロである。
加藤さんの話によると、ロシア語のガイドは数が少ないため、ロシア語メンバーがあつまると、プーチンの通訳はどうだったか、などの話題がふつうにあるそうだ。プーチン相手の仕事の依頼が来るなんて、面白すぎる、とわたしは思った。

加藤さんといっしょに、まずは御所へ行った。
京都御所は、かつては事前の申し込みがなければ参観できなかった。たまに一般公開があったが5日間ほどと短くその期間に観光客が殺到したそうだ。しかし今では通年で公開されるようになったため、御所はとても身近になった、と加藤さんは話した。

御所のまわりの広い公園につくと、朝早くからすでに多くの人が思い思いに歩いていて、桜や桃などの花が、はんなり、と上品に咲き誇っている。
歩いている人はいるけれど、静かに無言でその雰囲気を味わっている人が多く、喧噪はない。あたりはまったく、しずかで不思議な雰囲気で包まれていた。(つづく)

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