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担任というのは、子どもの顔を年中みているので、

ちょっとした表情の変化などを、感じることがある。

また、休み時間に子どもが校内のいろいろなところへ探検していても、

なんとなく、あのへんに〇〇くんがいやしないか、と勘のはたらくことがある。


職員室へ向かう途中、校舎の隙間から、予想通り、

〇〇くんの顔がのぞいて、ふと目があったりする。

予感がどんぴしゃの場合、自分でもおおー、と思う。

こういう情報というのは、脳内のどこでどう処理されているからなのか、

自分でも不思議だ。



わたしのクラス以外の子も、そのへんをテクテクと歩いているわけで、

その中にまぎれた自分のクラスの子を、まだよく見もしないうちから、

サッと感知できるのは、いわば特殊な能力だと言えましょう。(傲慢にも程が)




特殊能力と言えば、嫁様のことで、感心することがある。

嫁様は、すごいことに、ネコの尿意を、事前に察するのである。

「あ、おしっこしそう」とつぶやき、赤ん坊ネコをひょいと持ち上げて

トイレに連れていくことができる。

猫ははたして、その後、すぐにおしっこをするのである。

これは、わたしにはできない。

「まだ何もしていないうちに、なんでわかるの」

「わかるんよ。なんとなく」


事前に他人の(猫の)気持ちを感知できるのは、ほとんど、魔術としか、思えない。




近所に津村さんという、鶏を長年飼っていらっしゃる方がいる。

その方は、10代の終わりから、人生のほとんどを、鶏とともにすごしてきた。

そして、早朝から昼まで、ほとんど毎日、きわめて高速に鶏の羽をつかむ仕事をしていた。

もし、鶏の羽を背中からわしづかみにする回数を正確にカウントできたなら、

その回数において、とっくにギネスブックに載っている、という人であります。



その方は、ごくふつうに、

「あの子はちょっと風邪をひいてて調子が悪いナ」

と、たくさんの鶏のなかから、調子の悪い子を、見極めることができる。

「どうしてわかるんすか」

「うーん、顔の表情かな」


にわとりに、顔の表情があったのか・・・。

この事例など、人間の特殊な感知能力の凄さを示していると思う。





このように、人間というのは、なんだかしらんが、

ある関心事を、つきつめて、つきつめて、つきつめていくと、

神経のシナプス細胞が、その触手をひょろひょろと長-く、伸ばしていくようで、

凡人には計り知れない、あるセンサーを鋭敏に、『ど発達』させることができるらしい。



ちなみに、わたしは、ほとんど誤差なく、A4のコピー用紙を、30枚ほど、ずばっと、つかみとることができる。

たぶん、30枚の厚みを、指が覚えたのだな。

30枚というのは、クラスの人数分ね。

毎日のように、30枚だけ、宿題のプリントを刷っているので、感覚が覚えてしまったらしい。

ときおり、2枚とか3枚、ミスすることがあるけど。

人間の感知能力って、ちょっとすごいよネ~。(自分で言うな)


落語家