.
てんとう虫って、知ってる?

というと、なーんだ、そんなのみんな知ってるよ、と言う。

では、漢字で書いてごらん。

えーっ!!

「なーんだ、知らないじゃないの」



その後、

Yくんが、懸命に言った言葉が、衝撃でしたネ。


どんな虫か、見たことはあるけど、
どんな虫なのか、というのは、知らないよ。


知ってる、とか、知らない、とか、
難しいねえ~。
知ってるけど、知らない、というのです。



じゃあ、班のみんなで予想を決めて、書いてください。

わたしは黒板に、9つの枠を書く。

クラス全員で9班。

それぞれ、自分の班の意見を書きにくる。
4人の意見を一致させないといけないので、喧々囂々とやっているが、

「あと1分です」

というと、何とか仲間うちで折り合いをつけ、案を一つに決めてくる。


1) 点灯虫
2) 点頭虫
3) 点登虫
4) 点十虫
・・・



各班、それぞれ『点』という字を使っている。

ここで、わたしは朝捕まえておいたテントウムシを、かごから取り出す。

「あ、テントウムシ!」

いいですか。

この虫の、動きをよく見ていてください。

わたしはテントウムシを指にのせて、それから割り箸をのぼらせた。

てんとう虫は、勢いよく、わりばしをのぼっていく。

一番てっぺんにきたところで、わたしはわざと、わりばしをひっくり返す。

てんとう虫は、今度は一番下になったわけだが、負けじと向きをかえて、

ふたたび、わりばしを登りだす。


わかった!!!!

先生、わかった、わかった、ハイハイ・・・

子どもたちが、ほとんど全員、言いたいらしく、挙手してこちらを見ている。

教師は、こういうとき、心臓が止まりそうになります。

子どもの目の力、視線の力って、すごいですからね。



「では、やっぱりこうだ、と思う意見に、書き直してよいことにします」


言い終わるやいなや、子どもたちが前へ出て来て、
すごい勢いで、漢字を直し始める。

1) 点登虫
2) 点登虫
3) 点登虫
4) 点登虫
・・・


みんな、さっきの予想を消して、点登虫、と書き直した。


全員座って、わたしに、さもこう言いたげな様子。

どう?わたしたち、全員、合っているでしょう!

ニコニコ。




わたしはにやり、と笑って、



という字に、

×

をつける。

えーーーーーッ!!!



悲鳴ですな。

絶叫、と言ってもいい。


「もう一度、字を直してもいいです」


すると、またもや班の4人で、喧々諤々、あれやこれや、と言い合っていたが、

一つの班が、

「天登虫」

と書いた。


みんな、それを見て、

おおおう!!!!


という雰囲気。

あっという間に、黒板が、

天登虫


でうめつくされる。



そこまで言ってから初めて、


では、正解を書きますよ。

天道虫


黒板に書かれると、なんだ、それかー・・・、ため息がもれる。


ほら、おてんとうさまって、言うでしょう?

うんうん。

この虫はネ、いつもおてんとうさまの方へ、行こう、行こう、としているようだから、

昔の人が、「天道虫」って、つけたみたいだね。


次の時間、みんなで見つけに行くぞ、と言うと、

さっきまで、暗い顔をして、

「うち、虫きらあい・・・」

とつぶやいていた女の子たちも、

やったーっ!!

となりますが・・・

女の子、気分がころころ変わりすぎッ!!
人間の心って、不思議~ッ!!

天道虫