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【番組の説明】近代資本主義250年の歴史の中で、現在は格差が最も広がっていると言われる。巨大格差の先には、何が待っているのか。元米国労働長官のロバート・ライシュ氏や、“世界一貧しい大統領”と呼ばれたホセ・ムヒカ氏ら知の巨人たちに話を聞く。

また、自らへの増税を求める米国の富裕層グループの活動や、経営者の報酬を10分の1に削って従業員の最低賃金を7万ドルに揃えた企業の社会実験などを通じて、格差是正の可能性を探る。

学校では、『総合的な学習の時間には、何を教えるのか』ということがよく話題になる。

文科省も、現場が混乱していくのを避けるためだろう、学習の対象を次のように定めている。
学習対象とは,児童が探究的にかかわりを深めるひと・もの・ことを示したものであり,例えば以下のようなものなどである。

[横断的・総合的な課題]
・地域に暮らす外国人とその人たちが大切にしている文化や価値観
・情報化の進展とそれに伴う日常生活や消費行動の変化
・身近な自然環境とそこに起きている環境問題
・自分たちの消費生活と資源やエネルギーの問題
・身の回りの高齢者とその暮らしを支援する仕組みや人々
・毎日の健康な生活とストレスのある社会
・食をめぐる問題と地域の農業や生産者
・科学技術の進歩と自分たちの暮らしの変化など

[児童の興味・関心に基づく課題]
・将来への展望とのかかわりで訪ねてみたい人や機関
・ものづくりの面白さや工夫と生活の発展
・生命現象の神秘,不思議,すばらしさなど

[地域や学校の特色に応じた課題]
・町づくりや地域活性化のために取り組んでいる人々や組織
・地域の伝統や文化とその継承に力を注ぐ人々
・商店街の再生に向けて努力する人々と地域社会
・防災のための安全な町づくりとその取組など

以上が、文科省が提案している、学習の内容、対象となるものである。
現場としては、上記を参考にどのように学習を進めていくか、子どもたちの実態と興味、地域性などに照らしながら、もっともよい学習対象を真摯に選んでいくことになる。

ここに、
〇自分たちの消費生活と資源やエネルギーの問題
〇情報化の進展とそれに伴う日常生活や消費行動の変化
〇商店街の再生に向けて努力する人々と地域社会
なんていう項目がある。
文科省が例示するほどだから、これは全国民の課題である。
全国の市町村で、家庭で、話題になっていることだし、子どもたちの両親も、親戚、家族、友人、周囲の人々の多くが直面している課題なのだ。

つまり、子どもたちは自分たちの関心を大事にしながら、上記のような「経済活動」に関する地域の課題というものをも小学生なりに受け止め、咀嚼し、何らかの解決を考えていく、ということを期待されているのだろう。
これは、とても大事な活動だろうと思う。生活に、暮らしに、直結するのがもっとも効果的な学習であるのだから。

そこで、『NHKスペシャル マネー・ワールド 資本主義の未来(3)巨大格差 その果てに』という、NHKの番組をみんなで視聴する計画を立てた。

そもそも、資本主義とはなにか。
社会主義とは何か。
子どもたちには、なじみのない言葉もある。
しかし、「お金」は身近なものだし、ふだんからお金を使っての購買経験はみんなある。
ショッピングセンターやコンビニ、地域の商店などが流通のために果たす役割や、経営者の努力など、小学校3、4年生で勉強してきた。
だから、世の中にはとんでもないお金持ちがいるのだ、という感覚もあるし、番組の中に出てきた、

「薬か食べ物か、買うものを選ばないといけない」

という消費行動のせつなさにも、思いを致すことができるだろう。


番組を見ていると、次の疑問が湧いてくる。
〇なぜ、自分の給料を減らそうという経営者が現れたのか
〇なぜ、オランダの取り組みのように、『共有型経済』とよばれる仕組みがはじまったのか
〇「だれでも病気にかかる、ほっておかれて自力で生きられる赤ん坊はいない」→それで、どうするか
『共有型経済』については、番組中でアムステルダムの例が紹介されていた。
無料で日用品を貸し出すシステムだったり、料理をおすそ分けするシステムだったりと無料でいろいろと共有して、生活していくというもの。ほんのさわりだけの紹介だったので、よく実態が分からなかったが、資本主義とはいえない経済のかたち、ということで、印象に深く残った。

また、資本主義そのものについて、2人の人が警鐘を鳴らしていた。
ロバート・ライシュ
振り子が振れすぎた
格差はプラスの側面を超えて危険な状態に突入

ホセ・ムヒカ元大統領 ウルグアイ
現在の社会や経済のシステムに不安を抱くあまり、安易なポピュリズムに依存する
国粋主義になってしまう
さらに井出教授が
資本主義の経済格差にとどまらず、社会に分断線が生まれている
例)所得階層 正規/非正規 男性/女性
という話をしており、資本主義は富の格差を拡げていることで、人の心理を不安にさせ、人々の社会活動全般にも影響を与えている、とのこと。
井出教授が語るには、人々が将来に不安を抱きすぎるようになると、富はますます偏っていき、相手を非難し(ヘイト・スピーチ)、無理に奪おうとする動きにもつながるし、無力感と停滞感、諦めにとらわれ、世界を健全によくしていこうという人間全体の社会づくりの力は衰えるだろう、とのこと。


こういうこと、子どもたちは、いったいどう考えるのだろうか。

これ、今、生きている大人の人で解決できる人って、いるのかな? ・・・と思います。

おそらく、今の世界にはいないのではないか。



ことを見通す力を持つのは、おそらく小学校の教室で、未来を語っているまさに12歳の子どもたちなのではないか。

なにか、わくわく、するね。

NHK