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wikipediaによると、こうである。
エーリッヒ・ケストナーは、自由主義・民主主義を擁護し、ファシズムを非難していたため、ナチスが政権を取ると、政府によって詩・小説、ついで児童文学の執筆を禁じられた。
父方を通じてユダヤ人の血を引いていたが、「自分はドイツ人である」という誇りから、亡命を拒み続けて偽名で脚本などを書き続け、スイスの出版社から出版した。
ナチス政権によって自分の著作が焚書の対象となった際にはわざわざ自分の著書が焼かれるところを見物しにいったという大胆なエピソードがある。
ケストナー

今のように、日本も「集団的自衛権」を認めたり、ついには殺人兵器輸出による商売を認めたりする国になってきて、火薬の香りがしてくる時代は、ケストナーからまなぶことが多いだろう。

さて、ケストナーは小説や随筆を書いているが、詩集も書いている。

人生処方詩集 (岩波文庫)
エーリヒ・ケストナー
岩波書店
2014-11-15


ケストナーは、この本の前書きで、
〇自分の悩みを他人にいわせるのはいい気持ちのものである。
〇悩みを言葉に表すということは衛生的である。
〇たまには、自分の感じるのと、まったく反対の(他人の)気持ちを理解するのもなぐさめになる。
〇明確化、一般化、対照、こっけいな模倣、その他いろいろな尺度とヴァリエーション、これらはすべて試験済みの治療法である。
と、書いている。
こういう言い回しも、ケストナーの個性がとてもよく出てるよね。

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ところで、この詩集は、内容が濃い。
目次だけを見ても、この通り。

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年齢が悲しくなったら

貧乏にであったら

知ったかぶりをするやつがいたら

人生をながめたら

結婚が破綻したら

孤独にたえられなくなったら

教育が必要になったら

なまけたくなったら

進歩が話題になったら

他郷にこしかけていたら

春が近づいたら

感情が貧血したら

ふところがさびしかったら

幸福があまりにおそくきたら

大都会がたまらなくいやになったら

ホームシックにかかったら

秋になったら

青春時代を考えたら

子供を見たら

病気で苦しんだら

芸術に理解がたりなかったら

生きるのがいやになったら

恋愛が決裂したら

もしも若い娘だったら

母親を思いだしたら

白然を忘れたら

問題がおこったら

旅に出たら

自信がぐらついたら

睡眠によって慰められたかったら

夢を見たら

不正をおこなうか、こうむるかしたら

天気が悪かったら

冬が近づいたら

慈善が利子をもたらすと思ったら

同時代の人間に腹がたったら

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詩集には、これらの目次ごとに、数篇の詩が並んで掲載されていく。

ケストナーの詩は、ふとした時に手に取ると、ちょっとした気分転換になる。