「わたしはおねえさん」が掲載されている本は、「すみれちゃんのあついなつ」。
すみれちゃんシリーズとしては、3冊目にあたる本だ。

石井 睦美さんのこのシリーズ、最初に出されたのは、
「すみれちゃん」という題名の本。
これを、読んでみたら、すみれちゃんの人となりがとてもよく書かれている。

大事だ、と直感した。
それで急きょ、朝の会等で読み聞かせとして読むことにした。

わたしはおねえさん、の授業に入る直前である。
最初の1編は、すみれちゃんの自己紹介のような物語だ。

すみれちゃんが歌を自作して、気に入って歌うシーン。
この最初の物語から、歌はすみれちゃんの心の中で、とても重要なものであることが示唆されている。

すみれちゃんは自分の名前について考える。
シリーズの最初の物語が、出生の頃のひみつをさぐるテーマになっていることも興味深い。
自分のアイデンティティを感じておく必要がどうしてもあるのだ。
それはなぜかというと、この作品は、自他の理解、自分と出会う、他者と出会う、ということが大きなテーマになっているからだ。

すみれちゃんは自分の出生に関して、またアイデンティティの最も重要な要素である名前について知ったあと、すぐに妹の誕生を知って、いろいろと考える羽目になる。
妹、という重要かつ大きな存在感をもつ他者が、すぐに生まれてきて、すみれちゃんの人生に深く関わりあってくるようになる。

この「妹」という存在に直面して、心が迷い、ゆれ、それでもなにか大きな喜びや楽しみを感じとって、姉として育とうとしていく、すみれちゃん。

教科書では、「怒り」をきっかけに、他者である「かりんちゃん」と出会い、迷い、またその存在と自身を重ねて理解し、つながりあっていこうとする。

最初の本を読み聞かせすることで、この本の底に流れていくテーマが、しっかりと浮かび上がってくる。

「これは、自身に直面する勇気と、妹という他者に直面する勇気が語られている物語なのだな」



それにしても、読み聞かせを少しするだけで、教科書の読みがだんぜん深まり、子どもたちのノリが変わってくる。

自身をかさねてみよう、ということが、妹のいない子にも想像でき、重ねてみることができるようになる。
これは、シリーズの最初の作品を、読み聞かせしてきたことの効果であると思う。

妹が生まれる前から、心がゆれて、ゆれて、考え、考え、してきた、すみれちゃんの気持ちが、うんと身近になってくるのだ。

だって、姉になる準備、心の準備は、とうの昔、かりんちゃんが生まれる前から、すみれちゃんはひそかに、自分の中で心の中で、すすめてきたことだったのだから。
そこらへんが、読み聞かせをしたことで、子どもたちの心に「うんと」響き、感じる部分なのだろう。




トマトの絵