廊下にアメの袋。

ひろってから考える。
てっきり、職員のポケットから落ちちゃったんだな、と思いますよね。
「ははあ、○○先生かなあ・・・。のどイタイって言ってたし。たぶん、のどあめの代わりか何かで・・・」

ところが、その廊下をつい先ほど通っていた高学年女子の一群が、もどってきてすれちがう。

・・・と。

なんだか、甘い、フルーティーな、お菓子のようなにおいがする。

おや?

でも、そんなふうに、アメを食べちゃうような子です。用心深く、やっているはず。
アメの袋をポケットから落としてしまうなどと言う、古典的・初歩的なミスをするだろうか。
頭にハテナマークがいくつも点灯しました。

こういうとき、なんと言いますか?
見過ごしますか?
見過ごすのも一つの手です。他の学年ですしね。
あるいは、その子たちの顔や名札だけを見て、名前を確認してあとで担任に言うか。

でも、一応、聞いてみました。
いちばんやっちゃいけないのは、

「おまえら、アメたべてるだろ!!!」

です。
なにを証拠に・・・
証拠もないのに、決めつけてはいけません。
99%そうだ、と思うこともいいですが、証拠がないうちに戦ってはいけません。

相手は、

「あんたには証拠が無いじゃないか!」

という一点だけで、攻めてきます。
それしか手がないからね。
それをこわれたレコードのように繰り返されたら、こっちが負けます。
だって証拠がないもの。

でも、若い先生はこういうことで、すぐに戦ってしまう。
もう少しマシになると、
「アメ食べてるような感じがするなあ・・・」
と、ボカシます。

でも、もっとボカした方がいい。
「甘い香りがするね」
です。

これは、わたしが感じたこと。
こっち側が決めていることだから、相手も文句のつけようがない。
せいぜい、
「あっそ」
とか、
「鼻がこわれてんじゃない」
というくらいです。
でも、そんなのは屁のような返しです。こっちにダメージはありません。
こっちに、主体的な判断の根拠がある。こっちが決められることだけを語るのです。
相手側の判断に依存するようなことを言ってはいけません。
相手側に主導権がうつってしまいます。


さて、
「甘い香りがするね」
と言ってみたら、なんと言ったでしょう。

「お菓子とか、食べてないよ」
と言ったのです。
みなさん、どうされますか。

このままだと、

「疑うんですか?」

と、相手の仕掛けてきたゲームにのらないといけなくなります。

「いや、なんか香りがしただけ。先生の鼻、おかしいかなあ」
と笑顔で返します。
ここは、発言の根拠はあなたの側にはないよ、先生の判断のことを言っているだけだよ。とモードを訂正するのです。

さらに、笑いながら、

「食べてないんだよね。じゃ、もしかしたら、飲ん・・でた、とか?それか、・・なめ・・てた?」

とツッコミます。
ここで狼狽するようであれば、クサい。

「バッカじゃねーの。アメのむわけねーだろ」

まあ、こういう言い方しかできないのでしょうねえ。
でも、顔に焦りの表情も少しあります。
めんどうな人につかまっちまった、というような感じも。

でも、この勝負、ここで終わりです。
だって、証拠がないですから。
これは、戦ってはいけない勝負です。
ただし、
「こっちの勘はするどいぞ。ほんの少しでもミスすると、つっこむぞ」
という姿勢と構えを見せておく。

歯止め、防波堤、です。

表情はいつもおだやかに笑いながら、です。
なんとはなしに、ユーモアもただよわせつつ、です。
でないと、決定的な教師との絶縁が生まれてしまいます。
それだけは避けなければね。