うすっぺらい封筒。
帰宅時、なにげなくポストに手を入れると、○○県、の文字が。
おお!!
もっと遅いと思っていたのに、ついに来たか、通知が!
しかし・・・
ありゃりゃ?
と、意外な気持ちが抑えきれない。
なぜなら、実際の試験会場でも、合格発表は十月下旬と言っていたではないか。
早すぎる、と思うのと同時に、
あ、なるほど、落ちたのか、
と思った。
つまり、不合格者には先に通知が送られるのだろう、と思ったのだ。
合格した人には、順次、次の手続きや資料を同封してから送らなければならない。だから、その分、手続きが遅れてしまっているのではないか。
「こんなに早く、それも薄っぺらい封筒だから、落ちたのだろう」
そんなにショックが無かった。
自分でも不思議なほどだった。
なぜだろう、と自問する。
玄関でくつをぬぎながら、
「ただいま」
といつものように声をかけ、今勤務している学校が心地よいからだろうか、と考えた。
妻が赤ん坊を抱いて出迎えた。
「これ、封筒きたよ」
差し出すと、おおー、とうれしそうな顔をする。
「いやいや、こんなに薄っぺらいよ」
というと、早く開けたがって、リビングに持って行ってしまった。
部屋にかばんを置いてあとを追ってみると、
すばやいもので、もうハサミで封を開けようとしている妻の姿が目に入った。
「薄いからね。それに、思っていたよりも早いし」
ネクタイをほどく。
「そっかー。薄いねー。だめだったか」
封書を開けた妻が、眼を見開いて文面を見つめている。
テーブルにおいてある湯呑に手を伸ばした瞬間、
「あれ?なにこれ?どういうこと?」
と、はずんだ声がした。
口元に運んだ手が、止まった。
「内定って、書いてあるよ。どういうこと?」
え、それ、合格ってことなんじゃ・・・。
あとのことははっきり覚えていない。
落ち着かなく、猛烈な勢いでしゃべりながら、夫婦で廊下やリビングを行ったり来たり・・・。
「じゃ、次の3月は、引越しか?」
妻が、ソファーに腰をおろす音が、静かなリビングに響いた。
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