元エンジニア・新間先生の自問自答ブログ

転職を繰り返し、漂流する人生からつかんだ「天職」と「困らない」生き方。
高卒資格のまま愛知の小学校教員になった筆者のスナイパー的学校日記。
『叱らない で、子どもに伝え、通じ合う、子育て』を標榜し、一人の人間として「素(す)」にもどり、素でいられる大人たちと共に、ありのままでいられる子どもたちを育てたいと願っています。
生活の中の、ほんのちょっとした入り口を見つけだし、そして、そこから、決して見失うことのない、本当に願っている社会をつくりだそう、とするものです。
新間草海(あらまそうかい)




駅前のコインロッカーに、荷物を入れようとした。
すると、長野駅は今日はやけに混んでいて、空きがない。

なんだ。
と思って、別のコインロッカーを探そうとした。

すると、同じように困っている人がいた。
目立つ赤の旅行用ケースをひいている。
欧米の人である。
若い夫婦らしい。

顔を見ると、目が合った。
奥さんが、にこっと笑う。

おたがい、困りましたね、というような表情をしたら、なにか通じたような気分になった。

「フル」と言いながら、困ったような笑顔で、ロッカーを指す。
旦那さんは、念のために、というように、奥の方まで見ていたが、やはりダメであった。

そこで、私は別の場所にロッカーがあることを思い出し、いっしょに行こう、と指をさす。
すると、OK、というように、二人そろって、私のあとをついてきた。


駅の反対側、善光寺側でない方は、比較的すいているのかな、と思って出かけた。
二人は、でかい旅行用ケース。
それを、旦那さんが両方とも持って、引きずっている。
奥さんも背の高い人で、力もありそうなのに、ここは旦那さんががんばるらしい。
さすが欧米?なのか。
旦那ががんばる文化なのだろうか。

なにしろ、二人とも、非常に美しい。
ギリシャの彫刻のような顔をしている。
肌もきれいで、なんだか、芸術品を連れている気がする。

私が片言の英語の単語を言うと、向こうも、片言の英語の単語。

エレベーターに着き、1階まで下りると、なんだかすごい人だかりであった。
どうやら、何かのイベントがあるらしい。
大物落語家が、この長野の地に来ているのか??

小三治か、はたまた、三枝か、小朝か、もしかすると喬太郎かも・・・。

見たところ、みんな10代か20代。
若い女性ばかりである。
みんな一様に、特徴のあるおしゃれをしていて、雰囲気が似ている。

こんなギャルたちが集うのだ。
これは小三治ではないな。彼女たちに小三治はまだ早い。味が分かる子はまだそうはいないだろう。とすれば、小朝か、喬太郎・・・?
はたまた海老名家の三男坊、三平君かも。
彼にはコギャルもついてくる。

この巨大なコンサートがあるがゆえに、コインロッカーもうまってしまったようだ。
コギャルがコインロッカーから、たくさん出てきた。

まだ残っていますように。
そう思いながらロッカーにたどりつくと・・・。

ここも、満杯、である。
わずかに3つほど、小サイズのロッカーが余っていて、私は入れることができた。
しかし、外国人夫妻、「あれま」という顔をしている。

奥さんが、
「ノー。ノー。サイズ。ディスバッグイズ、ビッグ」
というような、超簡単なフレーズを言った。

私は自分の荷物を入れて、ひと安心。
しかし、この欧米から来た二人をどうするか。
彼らの旅行用ケースはでかい。
このでかいケースを入れるロッカーもあるが、そこはすべて、先客がいて、空きがないのだ。

ここで、二人にいろいろとたずねてみた。
「アーユー、フロム?ホエアー?」

「◎×△◆#!」

分からないので、
「ドゥーユースピーク、イングリッシュ?」

「ノー、フレンチ」
納得がいった。
彼らはフランス語なのだ。
それで、私の姉がフランスで絵を学んだ話をすると、

「それはわかったが、あいにく私たちはフランス人ではないのだ。もっとその上、北の方にある国からきた。首都はブリュッセルだ」

と言った。
「オー、ぶりゅっせる!」
と私が言うと、うれしそうな顔をした。
わたしはブリュッセルがどこの国の首都だか、そのときは自信がなく、何も言えない。
そのまま、二人をインフォーメーションセンターに連れて行った。

すると、長野駅の構内中央付近にある大きな観光インフォメーションセンターのお姉さんたちは、さすがに英語がペラペラで、私よりもはるかに流暢に、コインロッカーの場所を説明してくれた。あと2か所ほど、善光寺側の1階に、ロッカーがあるようであった。

しかし、私はそれも危惧した。
今日のこの雑踏、それも巨大な落語のビッグコンサートがあるような日。
特別な人の出があるような日に、ロッカーの空きがあるのか??

そこで、JR側のインフォメーションセンターをふと見ると、こちらは初老のおやじさんが一人。
むしろ、こっちの人の方が、年の功でいろいろと知っているのでは。
ひらめいた。

そこで、ベルギー人夫妻をそこに待たせて、おやじさんに聞きに行くと、

「善光寺側の1階に、クロネコヤマトの荷物窓口がある。そこのおばさんが、一時預かりをしてくれているようだ」

という。
さすが。
亀の甲より年の功!

それで、ベルギー人夫妻に報告すると、旦那さんは奥さんを慮(おもんばか)って、

「一度、わたしがチェックをしに行く。でないと、このケースが重すぎて」

とかなんとか、英語でしゃべる。
私も自信がないから、それがいい、とついていくと、ベルギー人の旦那は先に1階のコインロッカーを見に行った。
しかし、やはり、空きがない。
ギャルたちがたくさん、そこから列をなして出てくる。
先にとられてしまった。

あちゃー、という顔をする、ベルギー人の旦那。

そこで、私がクロネコヤマトの窓口に足を踏み入れて、おばちゃんに聞くと、

「はい、ひとつ500円ですわ」

とのこと。
やった、これで旅行用ケースを預けられる。

「でも、あいにく夕方5時に閉まるんです」
なるほど。それでもいい。

ベルギー人の旦那に説明すると、よし、という顔に決意の表情を浮かべて、奥さんのもとへ急ぐ。
急いで階段をのぼる彼に、ショップが5時でクローズする、ということを教える。
しかし、目が血走ってきた彼は、足が長いのと速いのとで、私がちょっと追いつけない。
階段の下からのぼって追いながら、

「ヘイ!」

と言うとふりむいて待ってくれたが、さすがにヘイ、では芸がないと思って名前を聞くと、

「ピエーだ」という。

「ピエー?」
「イエス、ピエー」


ピエール、というとフランスっぽいな、と思って、

「ピエール?」と確認したら、
「オーイエス、ピエール」

という。
こちらも聞かれたので、ソーカイだ、と答えると、

「おー、ソーカイ!」

という。
「おお、そうかい」
と二人で言った後、ショップのクローズを説明すると、それでよい、とのこと。

そこで、二人がそろってくるのを待ち、クロネコヤマトのおばさんに荷物を預けるのを確認した。ここでトラブルがあったら、おばさんも夫妻も両方かわいそうだ、と思ったのだ。

クロネコのおばちゃんは、二人の背の高い外国人が急に入ってきたので、思いきり不安そうな表情を浮かべている。
瞳孔が開き、目が宙をおよいでしまっている。

「あ、あ、なんでしょうか・・・」

そこで、私が登場し、日本語で説明をすると、ようやく安堵した表情になった。
しかし、

「あの、500円かかるんですけど・・・」
と何度か繰り返した。

わたしは、ピエールに向かって、赤いケースを一つ指さして
「ファイブ、ハンドレッド、ィェン」
と言った。
ピエールも、復唱する。「ファイブ、ハンドレッド、ィェン」
私は落ち着いて、またもう一つのケースを指さし、そのまま低い声でつづける。

「ファイブ、ハンドレッド、ィェン」
ピエールも、おとなしく、復唱。
「ファイブ、ハンドレッド、ィェン」

おばちゃんは、われわれのやり取りを、不安げな顔つきで、眼鏡越しに見つめている。

「オール、ツーバッグ、・・・ワンサウザンド、ィェン!」
私がひときわ大声で、これを言うと、おばちゃんはたじたじ、となって2、3歩店内をあとずさりした。

ピエールも、万事了解した、といわんばかりに、深くうなずき、
「OK」という。

背の高い美人の奥様が、にっこにこしながら、荷物を置いて、ミニポーチを取り出した。
これで、よし、というふうに。

荷物を預けたことを確認して、ふたりに
「シーユー」
というと、
「サンキューベリマッチ」
と言って、奥さんとピエールも、ふたりとも、ものすごい笑顔になった。


しかし、あそこから、きちんと善光寺へお参りできたのかな・・・


自分でもわりと気軽に、見知らぬ外国人に話しかけられたことに、われながら驚いたが、これも教師をしているせいだろう。
帰りの電車の中で、自分でそう解釈した。




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