私は卒業式予行練習のスタッフになっていた。
放送全般。
6年生の練習に、しっかりとつきあわなくてはならない。
そのため、2校時は自習とせざるを得なかった。

教科書をうつしたり、ノートまとめをしたり、児童はやることがたくさんあった。
プリントだって、やることになっていた。

しかし・・・。


どうやら、クラスの大半がこのいたずらに加担したらしい。
教室がおばけやしきになっていた。
画用紙で切り取った、おばけの数々。
たんねんに、クーピーで色塗りされたおばけが教室のいたるところに貼り付けられた。
リーダーは、男子のSさん。
それに、女子の実力者、SさんやTさんも加担。
クラスの大半がそれにひきずられ、作業に加わったようだ。


私が教室に入ろうとすると、ドアの開き具合に違和感がある。
少しひらくと、もうすぐで切れそうな輪ゴムが足もとに見えた。

あ、と思う間もなく、それがぶちっと切れて、
同時に目の前に、

がびょ~ん


という感じで、紙でつくった骸骨が飛んで現われた。


思わず私がびっくりして、のけぞりそうになるのを見て、みんな大笑い。

そして、口々に、

「おれが骸骨つくった!」

「本当は黒板消しでやろうと思ったんだよ」

「ゴムちゃんと切れたな~」

「黒板見て!!」

と言い始める。


まったく、3時間目は最後のテストだというのに・・・!
怒る気力が失せて、とにかく教師の中に足を踏み入れると、

「先生、ありがとう!」

と黒板にでかでかと書いてある。
そして、教卓にはまた、

「あ」と「り」と「が」と「と」と「う」

のそれぞれの文字の形に切り取られた紙が貼り付けてあるのが目に入った。

これだけ、切り取るのも大層な作業であったろう。
それが、急いで塗られたらしく、色ペンで赤や緑や黄色にそれぞれ、塗られている。
ぐちゃぐちゃだ。
この仕事は、男子の分担と見た。


ともかく、教卓の前に立って教室をみわたすと、そこらじゅうに紙がちらばり、はさみとのりとセロテープのすごいこと。机上に教科書をのせている児童はほとんど、見当たらない。

「自習、ちゃんとやってたのか!」

ようやく、その一言で、片付けが始まった。


Fさんがが、

「おれはやってないんだのに・・・」


と言うのを聞いて、


「やってなくても、片付けろ!」

と慌てふためいたKさんが、自分も片づけながら言うのが可笑しい。


あれこれ、言いたくなったが、ともかくもテストの時間にする。

いたずらが、こどもたちの力を示すとしたら、4年生としてはまあまあ、だ。
輪ゴムがきちんと切れて、思い描いたとおりに、骸骨が飛び出てきたのだから、よし、とすべきだろう。
あとは、それを盛り上げるための、教室中のディスプレイ。マンガやゲームのキャラクターのようであったが、一つ一つ、みんなで声をかけあって、一体ずつ作りあげ、それを間隔をあけながらきちんと貼ってある。

どんな相談があったのかわからない。
この子たちが仲良しでなければ、こういったこともできないのだろう、と思う。
これもひとつ、学級を名残惜しむ心のあらわれ、なのかと思うことにした。