ボスが、他の子をこきおろした。

「先生!A子のこと、ちゃんとみてない!」

ボスは、なにかやましいことがあるのかもしれない。
大体、ひとが、何かを批判するとき、攻撃するときは、自分のことを批判されたり攻撃されたりすることを回避しようとするときだ、・・・(と習った。大学の心理学講義で・・・)。

A子が、自分の好き勝手に、グループをつくり、命令をしている、という。
B子が、A子の命令を受け、指示に従わせられている、という。

「B子がかわいそうじゃん!奴隷だよ」

A子とB子については、その周囲の子の状況を、個別に聞いて把握している。
いじめではない。
確信がある。
B子のさびしさ、A子のやさしさ、お互いの気持ちも聞いていた。
A子が強く出るときもあり、やりすぎもある。
しかし、それ以上に、いっしょに遊ぶ楽しさがある。だから、B子からの訴えはないのだ。
B子に個別に、本当に大丈夫か、と確認しているが、今のところはいじめではない、と判断していた。

これは、要するに、ボスが、めざわりな他の実力者を排除しようとしているのだ、と考えた。
A子が、ボスの目にとまったのだ。
こっちは、ボスが、A子を、つぶしにかかった、と見た。

そのA子つぶしに、教師を利用しようとしたのだ。

だんじて、のってはならない。

のる、とはどういうことか。
「他の人に聞きましたが、A子さん、命令をして、いじめているのではないですか」
と、クラス全員の前で、詰問することだ。A子さんを立たせて。

これは絶対にしてはならない。
それをみて、ボスたちが「やった!」とにんまりするシーンが目にうかぶ。
そうはさせない。

のらりくらり、スジを確認しながら、あなたたちは、まさか命令なんてしてないよね、と確認しながら進めて行く。話を、A子から、「あなたたち」へと移して行く。そうしながら、本来のあり方、人に命令する、などという非人道的な態度について、おさえていく。

最初はそう思った。

しかし、ボスたちの口撃がものすごい。

こっちの心がヤワなのか、口で人をこきおろす、というのをガンガンと聞いていると、ゲンナリしてくる。
A子がいかにひどい人間なのか、これでもか、というくらい、言ってきた。

「そうか。先生も話をしたつもりなんだけどなあ。」

「つもり、じゃいかんが!ちゃんと話をしないと!」

「そうか。じゃあ先生ももう一回、話をするよ。先生も、A子ちゃんに、人に命令したり、自分の勝手な考えで、感情のままに、行動してしまう人にはなってほしくないからなあ。どんな人間になりたいか、ということ。これを考えていきたいなあ。ひとりひとり、みんな。・・・クラス中でね」

最後に、クラス中で、と言って、ニッと笑う。

ボス連は、クラス中で、と聞いて、サッとひく。

この後、「人に命令する」とはどういうことか、つっこんで、話し合おう。
指揮と命令の違いについても。
なによりも、焦点を当てたいのは、ボスが、「命令って、かっこ悪いな」と思ってくれることだ。

ボスが先。
A子対応は、2番目だ。
順番をまちがえてはならない。