学級文庫として、たまたま将棋の本を買った。
「将棋入門 小学生向け」
買って並べたまま、忘れていた。
ところが、この2学期の間に、かなりの子がこれを読んだようだ。
家でも、お兄ちゃんと対戦した、という子が出てきた。
将棋盤を買ってもらった、という子もいた。
5分休みに、これまた、たまたま将棋の話になった。
すると、あとからあとから、やりたい、という声が出た。
さっそく、トーナメントでやることにした。
勝ち負けを決める、ということになって、ひるむ子が出た。
しかし、やってみる、という子が8人。
じゃんけんでシードを決める。最後に勝ち残った勝者が、最終決戦で先生と戦う。
勝手に、トーナメントの紙をつくり、これをやる、と宣言する。
これは、児童にはやらせない。
格をあげるためだ。
「将棋トーナメント」、という字も、教師が墨と筆で、かなり凝って書いた。
翌日、掲示されたトーナメント表の前に、何人も立ってみている。
ルールに関する質問が出始める。
しめしめ、だ。
「先生、本当に名人なの?」
優勝カップと王冠の絵の横に、最後に、先生と戦う、と書いている。
そのわきに、K名人、と書いた。それをみて、先生は本当に強いのか、と聞いているのだ。
「そう。名人だ」
ひょうひょう、と言っておく。当たり前だよ、という感じで。
女の子は、すごいなあ、という目が大半。
男の中には、本当かな、という疑わしい目もある。
「まあ、先生をたおしたら、小学生では全国レベル。将来、確実に、羽生名人級」
と言っておく。
おもしろくなってきた。
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