「新婚旅行、どこがいいと思う?オーストラリアは?」
嫁さんも最初はこんな言い方で話題を振ってきていたが、見かねてなのか、
「もう旅行、行かなくてもいいから」
と言うようになっていた。
正直、この言葉に救われた気持ちだった。
「ちゃんとした教師になって、受験も合格したら、のびのびと旅行しようよ」
なんとありがたい嫁さんだろう。
レポートが返ってくると、成績がついてくる。
ほとんどAだった。
これも励みになった。
試験もほとんどAであった。
やれば結果が出るな、と思った。
勉強を10年ぶりにしていることで、ようやく頭が回転しはじめたらしい。レポートが苦でなくなってきた。それに、いろいろと知りたい、という気持ちがどんどん湧いてくる。勉強ってあんがいと面白いなあ、というのが、不思議と実感できる日々だった。
コンピューターやセキュリティのことだけやっていたら、頭がどうかなっていたかもしれない。逆に大学のさまざまな教科の勉強をしたおかげで、ちょうどよく、リラックスできていたんじゃないだろうか。
結婚式は11月、市内のレストランで、格安に行った。
地味ではあったが60人の家族や親戚、友人たちが集まり、祝ってくれた。
式の翌日、頭がふらふらしたが、玄関でいつものとおり靴を履いた。
行き先は空港でもオーストラリアでもなく、いつもと同じ職場だった。
(つづく)
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