4月から本格的に担任として教室にたつようになった。
朝から帰りの会まで、ずっと子どもたちの前に立っている、ということが、こんなに大変か、と改めて思う。
ずっとみんなに注目されている、ということ。
一挙手、一投足、というけれど、本当にそうだ。せりふの一つ一つが、ぜんぶ子どもたちに吸収されていくのだ、と思うと、緊張がつのる。

それでも、子どもたちは明るい。
内心あせっていても、ちゃんと待っていてくれる。申し訳ない、と思う。
そう思いながら、急いでプリントを探したり、机の上の赤えんぴつを探したりしている。
準備、準備、準備が大切。そう言い聞かせながら、どこまでも完全な準備などできない。

読み聞かせをした。
生活の時間で、予想より早く作業が終わってしまった。
子どもたちが、ダレはじめるより早く、机の上をしまわせて、とっさに読み聞かせをした。
本棚から一冊をとりだし、読み始めた。

読んでいながら、だんだんうしろにさがった。教室の左右のはじ、一番前に座っている子が、くびを傾けている。上半身を下げ気味にしている。見えにくいのだ。

あっ、と思って、うしろにさがる。
とうとう黒板に張り付いた。

そのまま読み続けた。
とうとうたまらず、「Yくん、それからAくん、みえる?」
と聞いた。

物語の世界が、それで一瞬、くずれた。
YくんとAくんが、うなずいてくれた。
すぐに物語の世界に引き戻す。

あとで、先輩に尋ねた。立ち位置について、である。

読み聞かせのとき、教室の角のところで読む、と聞いた。
そうすると、教師は、90度の角に挟まれる。
90度の視野のなかに、みんなが入れる。

そうだったのか、と思った。
ささいなことだが、このことに、教師の意識が顕れている。